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緩やかな発狂

「なあジョジョ、夕食が終わったら君の部屋に行ってもいいかい?」
「あ――ああ、いや、ごめん、ディオ。ちょっと調べ物をしなくちゃならないんだ。何時までかかるか分からないし、今日はその、やめておこう」
「ぼくも手伝おうか?きっと掛かる時間も半分になる」
「ありがたいけど遠慮しておくよ。君もたまにはゆっくりと、1人の夜を過ごしたらどうだい。つい一昨日、大量に本を仕入れてきたばかりだろう?」
「今夜のジョジョは、なんだか頑固だなぁ。ま、そこまで言うなら引き下がってやろうじゃあないか。残念だけれどね」
「ごめんね」
「埋め合わせはちゃんとしてくれよ」


・×日目
どうにもジョジョの様子がおかしいようなので日記を付けながら経過を観察してみようと思う。

初めてぼんやりとした異変を感じたのは、調べ物がどうのと断られた時だ。5日ほど前のことになるだろうか。あの時ジョジョは、別におかしなことを言っていたわけではない。そうして断られたことは初めてではないし、逆にぼくが断ったこともある。ただ1つ引っ掛かったのは、あの時のジョジョの声が、やたらに頑なだったことだ。いつもより低い、まるで大人の男のような声はぼくの知るジョジョのものではないようで、ぼくは内心酷く困惑しながらも引き下がったのだった。
まああいつもそろそろ大人と認められる年になるのだし、そろそろ声くらいには威厳が出てきても良い頃合いなのだろう。だから、それはいい。あのやり取りの中自体には、さしたる問題はなかったのかもしれない。
ただ、同じことが4度続けばどうだろうか。
夜を徹してまで調べ物をしなければならない課題などは出ていなかったはずだった。さすがにおかしいと思い、夜中にこっそりジョジョの様子を見に行ってみたのだが、案の定奴は調べ物などしていない。書斎の端にどっかりと腰を下ろしたあの男は、立てた膝の間に首を埋めて、ひたすらにうなだれていたのだった。
ぱっと見は妻子に逃げられた中年男である。なんか、若さとか、そういうものが一切なかった。このぼくがうっかり同情心などを抱いてしまう程に。
しかし時間をおいてみれば腹も立ってくるもので、ぼくを放っておいてなにを無為な時間を過ごしているのだと、それはもう苛々して仕方がない。
ジョジョの苦悩とぼくとの関係に関連性があるのかどうかなどは分からないが、時期は重なっているわけなので、ちょっと注意して様子を見てみようと思う。

とにかくぼくは、ぼくをないがしろにしてまで自分の殻に籠ろうとするあいつが許せないのだ。



「……おい、なんで顔を背ける?」
「い、いや、その……あ、そうだ!その、匂いのきついものを食べたばかりだから、気になってしまって!」
「あ、そうだ、ってお前……なあジョジョォ。ぼくはチョコレートのことを、匂いのきつい食べ物だと思ったことはないんだけれどなぁ」
「え?あ、あれ、ああそっか、そうだ、今日のおやつ、チョコだったんだっけ……」
「君、なにかおかしいぞ。一体どうしたんだ?」
「ど……どうもしない、よ?」
「おい口の端引き攣ってるぞお前」
「う、うう」
「吐いてしまえよ。その方が楽になるぜ、きっと」
「~~だからっ!どうにもしないんだってばー!」
「あ!おいこらジョジョォォ!貴様このディオを袖にしようというのかぁぁ!」


・×日目
相変わらずジョジョはよく分からない理由を付けてぼくの誘いを跳ね除ける。
少し強行的に攻めてみようとキスを仕掛けてみたものの、こちらもよく分からない、どころか頭が悪いとしか思えない理由を付けて断られてしまった。しかもなんだ、ダッシュで逃げやがって。なんだあの速さ。カモシカか。
しかしこれではっきりした。ジョジョは明らかにぼくを避けている。ぼくを、というか、ぼくと関係を持つことを。



「そんな恰好をしていたら風邪ひくよ」
「おい」
「しかも風呂上りじゃあないか。湯冷めを舐めちゃいけないぞ。風邪を引くときは一瞬なんだから」
「……なにをせっせとボタンを閉めているのだ、このまぬけ!」
「うおっ!?ちょ、ディ、ディオ、さすがに脛は、卑怯だ!ああ、痛い……」
「なあジョジョ、分かるだろ?ぼくがここまでしてるんだぜ?ほら、なんかこう、こないものか、こう、むらっとしたものが」
「こ――こ、こないよ。ディオの肌なんて、見慣れているものね」
「…………」
「わああどうして肩まで出すんだい!」
「これはさすがにきただろう!ぼくを抱きたくなっただろう!」
「こっ、こない!こないんだってばー!というかそんな剣幕で迫られて、ぐらっとくる男なんていない!」
「そんなことを言いつつも顔が真っ赤になっているぞ、ジョジョォォ!さあいい加減素直になれ、そしてぼくを抱け!貴様の下らない悩みなど、ぼくに突っ込んだ途端に吹っ飛ぶに決まっている!」
「なんなんだい、その自信は!?そしてそんなに明け透けな言葉を遣っちゃいけない!紳士たる者の振る舞いではないぞ、ディオ!」
「紳士など、お前が勝手に目指しているだけだろうが!」


・×日目
殴り合いになった。腫れた頬が痛い。まあジョジョの頬も今頃ぱんっぱんに腫れているだろう。ざまあみろ。

今日はシャツを肌蹴させて迫ってみた。結果から書けば、失敗だ。対面した瞬間になにやら修行僧のような顔になったジョジョは、ぼくが誘い文句を投げかける前に淡々とボタンを閉めだしたのである。その後はまあ、なんというか、売り言葉に買い言葉でいつものジョジョに戻ってしまったものであるが。

最中は頭に血が上っていて、どうしてジョジョはぼくとすることを拒むのだ、さっさと抱けよ馬鹿、くらいのことしか考えられなかったのだが、今にしてみればどうして自分があそこまで激していたのかがよく分からない。
あれじゃあぼくが、ジョジョに抱かれたくてたまらないみたいではないか。
いや、確かに行き着く所はセックスであるのだが、ぼくはあいつに抱かれたいのではなく、あいつにぼくを抱かせたいのだ。ジョジョとのセックスなんて、最初からそんな理由から始まっている。
そもそも愛があっての関係ではない。というかそんなセックスなどは知らないし、そんなものは生涯経験することはないだろうし、どうでもいい。

人間一人を堕落させようというのなら、過分な金銭を握らせるか性欲の沼に叩き落としてしまえばいい、というのが、くそ下らないロンドンの生活でぼくが学んだことである。
ぼくはジョナサンという男を堕落させてしまいたかった。うまくぼくの僕にできるのならそれに越したことはない、と思っている。そこで、まあ、坊ちゃん育ちのジョジョに金などはなんの効力も持たず、結局体を使うしかなかった、というのが情けなくも腹立たしい話ではあるのだが、使えるものは使わねば。幸い、そういう経験は人よりある方だと思うし。
それなり以上の効果はあったのだと思う。ジョジョはおもしろいようにぼくとの行為に溺れてゆき、さすがに今はそういった期間は過ぎてしまっているが、体を繋げる関係は当たり前のように続いている。
ぼくを自分勝手に犯している、男しての尊厳を踏みにじっている、とでも思っているのだろうか。行為の後のジョジョはいつだって、ほの暗い罪悪感の滲む目でぼくを見る。もう最高の気分である。あのジョジョが、卑屈な目をしてこのディオを見ているのだ。
それでもぼくとの行為をやめられないあの男を、ここしばらくばかりは愛おしい、とすら思ってやっている。人間性だとかは、まったく好きになれない男だけれど。セックスをしている時だけは、この世にこんなに愛しく思える存在がいたのだろうか、というくらいジョジョが好きだ。ほんと、最高なんだ。ひっどい顔をしてぼくを犯すジョジョを、腹の下から眺めるのは。

……なんだこの日記は。傍から見れば、どれだけジョジョなる男が好きなんだ、という感じになっているぞ。
ああ、なんだっけ。ああ……あー、そうだそうだ、問題はジョジョではないのだ。ぼくのことだ。どうしてぼくは、あんなにむきになってしまったのか、という。
しかしなぁ、考えても分からないんだよなぁ。別にあいつに抱かれなきゃ死んでしまう、ってわけでもなかろうに、なんでぼくはああも、頭の悪い女のようにジョジョに迫ってしまうのだろう。



「……え、ディオ?……え?ええ?本当に?」
「似合わないかい?ちょっと頑張ってみたんだけれど」
「いやぁ……似合いすぎだよ、ディオ。一体どこのお嬢さんなのかと」
「よかった。まあ、ぼくも最近は伸び盛りだからな、こんな格好をできるのは今だけだと思うけれど」
「ふふ、なんだかお人形さんみたいだね、君。いつもの君も綺麗だけれど、こういう君も、たまにはいいかもしれないな。父さんにはもう見せた?娘ができたみたいだって、喜んでくれるかも」
「いいや、こんな姿を見せるのは君の前でだけだよ」
「どうして?そんなに似合っているのに、もったいな――うわぁっ!」
「油断したな、ジョジョ!」
「不意打ちとは卑怯な!て、ていうかディオ、お、重いよ、どいてくれ!」
「おやおや、もしぼくが本当にご婦人だったとしても、ジョジョはそんなことを言うのかい?とんだ紳士がいたものだな」
「君はぼくの弟の、ディオだろう!……頼む、ディオ。早くぼくの上から、降りてほしい」
「力ずくでどかしてみればどうだ?できるだろ?君、馬鹿力なんだから」
「……可憐な女の子にしか見えない君に、そんなことはできないよ」
「ふふん、まぬけめ。それじゃあ丁度いい、このままするぞ、ジョジョ。特別にこの格好のままで抱かせてやろう」
「ディオ……それは勘弁してくれよ。もう分かっているだろう?ぼくはもう、君とは――」
「聞きたくない」
「ディオ――!!」


・1×日目
風呂場に乗り込んで行ってやってもそそくさと逃げやがった。本当に不能になっちまったんじゃあないか、あいつ。ぼくはまだ20にもなっていないーとか言っていたこともあったけれど。
半裸でもダメ、全裸でもダメだときて、ぼくも自棄になっていたのだろうか。貯め込んだ小遣いを叩いてドレスを購入し、女装をして迫ってみた。女への耐性なんてないんだろうな。ジョジョは面白い程真っ赤になってしまっていた。
さすがのぼくでも、こいつこの年でこんなんで大丈夫なのだろうか、と若干心配してしまったものであったが、まあよくよく考えればジョジョは終生このディオの支配下に置かれることになるのだから、女への耐性など必要ないのだろう。うん、むしろ喜ばしいことだ。変に脇目をされると、また一々ジョジョの首をこっちに向けさせなくてはならなくなる。そんなのは手間でしかない。ジョジョがちゃんとぼくを見ていれば、なんの問題もないことだ。

多分、この女装作戦が今のところ、一番に効果を上げたのだと思う。が。下着をずり下ろすところまで行っておいて、ぼくの事情で撤退しなければならなかったことは、痛恨の極みという他ない。
もう、これに関して書きだすとどうしようもなくなるので、結果だけ書いておくことにする。これを読み返した時のぼくよ、この気持ちを忘れずに、決して同じ愚行を繰り返さぬように。

ちらっと見えた姿見に映ったぼくは、どう見ても若かりし頃の母だった。
以上。

なんだか母を汚してしまったようで落ち込んでしまったので、今日はここまでにする。

なにもかも、ジョジョが悪いのだ。ぼくを拒むのみならず、最近のあいつは、まったくぼくの目を見ようとしないから。調子が狂う。あんなにまっすぐにぼくを見てくる奴は、あいつだけだったのに。こっち見ろよ馬鹿。



「……何故ぼくを見た瞬間に身構えるのだ」
「こ、今度はどんな手でくるのかと思って」
「君が無駄な抵抗をやめればすぐに、ぼくも大人しくなるというのになぁ。……でもまあ、今日くらいは安心するといい。ぼくは君に、なにもしない」
「……ディオ?ちょっと失礼」
「っ、なにをする」
「いや、なんだか火照っているように見えたから。うんよかった、熱はないみたいだね」
「気安く触れるんじゃあない」
「君はもっとすごい場所に触ろうとしてくるくせに」
「……なあジョジョ、お前、ぼくを抱けよ。ここでいいから」
「……本当にどうしたんだい、ディオ。そんな投げやりなのは、君らしくないよ。君、いつもは全力でぼくに迫ってくるじゃあないか」
「投げやりなんかじゃない、本気で言っている。なあ、ジョジョ」
「……ごめんね、できないよ」
「……そういうと思った」
「どこへ行くんだい?」
「少し寝る。夕飯の準備ができたら、起こしてくれよ。少々熱っぽくはあるが、腹は減っているんだからな」


・1×日目
結局ぼくがあの手この手でジョジョとの行為に持ち込もうとするのは、欲求不満からきているのではないか、ということで決着をつけていた。
なにかがおかしくなったのは、やはり数日前の女装の一件だろうか。下着をずり下ろすところまで、ということはつまり、ぼくは久しぶりにジョジョの性器を目の当たりにしたわけである。正直喉が鳴った。見た瞬間に、早く飛びついてしゃぶりたいと思った。一気に体が熱くなって、痛い位に勃起したのも覚えている。その直後にまあ、姿見の一件があったので有耶無耶になってしまったが、あの時に湧き上がってきた衝動は明らかに異常だった。

そんな時に丁度、今日の話ではあるのだが、同級生に好きだ、恋人になって欲しいと言われた。名前も曖昧な相手であったので、もちろん断った。すると思い出に一度だけ抱かせてほしい、とか言われたので、うっかりああいいよと返事をしてしまった。普段なら決して、そんな返事はしない。ただ、試したかったのだろうな。あの激情ははたしてジョジョに抱いたものであるのか、男の陰茎というものに抱いたものであるのかを。
結局行為は最後まで行き着かなかった。愛撫を受けている最中に、気持ち悪くなってやめさせた。体自体は久々の刺激にはしたない程興奮していたようであったが、なんというか、頭が。ぼくはこんな奴としたいわけではない、だとか、とにかく行為を拒絶したがっていたのだった。

相手にすまない、と謝っている最中も、ぼくの頭の中を埋め尽くしていたのはただ1人、ジョジョのみだった。たったひと月近く前は当たり前に繰り返していた行為の記憶が洪水のように溢れかえって、泣きたくなるくらいに、飢えた。
どうやって帰ったのかは覚えていない。
リビングで寛いでいたジョジョと、どういう会話をしたのかもよく覚えてない。
またすげなく断られたことだけは、なんとなく覚えてる。

なんだろう、この気持ちは。よく分からない。欲しいものは沢山あったし、ほとんどを奪ってでも手に入れてきた。でもジョジョのことは、それらとはなにか違う気がする。
なんというか、手に入れてもそれだけで満足できるようなものじゃあ、ないのではないかって。自分のものだと思えば思う程、もっと欲しくなってしまうのでは、いざ失くしてしまうと自分すらも失ってしまうのではと、ちょうど、ジョジョとの関係が切れてからのぼくのように。
分からない。自分の感情が制御できないだなんて、こんな馬鹿な話があっていいわけがない。それも、ジョジョなんかに調子を狂わされるだなんて。
ああ、くそ、あああ、もう
だめだ、もう辛抱できない はやくジョジョと寝たい ジョジョのが欲しい
ジョジョがほしい



「…………」
「…………」
「……何故鍵をかけていないんだ」
「……何故君は、ノックをしてくれなかったんだ」
「したよ、したともさ。なのにちっとも気付いてくれなかったのは君じゃあないか。なあ、そんなに気持ちいいのか?自分でするのって。ぼくは1人寂しく抜かなければならないほど不自由をしたことがないので分からないんだが、そんなに、ぼくにも気付かないくらい熱中してしまうものなのか?なにを思い浮かべて抜いてたんだよ、おい、ジョジョ。ぼくが再三誘ってやってるにも関わらず、そんなことをするくらいだ、さぞいいネタが手に入ったんだろうなぁ?なあ教えてくれよ、今度はそれを参考にして、君を誘ってみせるから、なぁ――」
「お、落ち着くんだ、ディオ!せめて下着くらい履かせてくれ!」
「っ、お前は、本当にもう、お前という奴はー!」
「あ――あれ?あれ、ディオ!?どうして逃げるんだい?いつもの君は、もっとこう――」
「ぼくの気持ちも知らないで!」
「おーい、ディオー!?」


・2×日目
前回の日記がなにやら感情的になりすぎて気持ち悪いことになっているが、自分への戒めとして残しておくことにする。
そうだ、そうだ、今回の日記はこう書きだして、そこからまたおかしくなったジョジョの経過を綴る予定だったのだ。それがどうだ、あんな光景を目の当たりにして、ぼくの精神はすっかり前回の日記の、最後の辺りを書きなぐった辺りにまで戻ってしまっている。
どうせぼくしか見ない日記だ。体裁を整える必要などない。後に読み返した時には軽く死にたくなるかもしれないが、今はとにかくこの、どうにもできない感情を書き散らしてしまいたいので、ペンの動くままに文字を書いてみようと思う。以上、言い訳終わり。

ああああくっそなんだああああの阿呆ジョジョのアホ!散々っぱらぼくを拒絶しておいて自慰かオナニーかぼくより右手がいいってかクソ野郎散々ぼくを無碍にしておいて!!!
お前の手にこびり付いた精液を見た時の、ぼくの死にたくなるような興奮になんて気付いていないんだろうなぁお前馬鹿だものなぁ!今すぐにでもしゃぶりついて舐めとりたかったわ!むしろお前のペニス本体を咥えたくて仕方なかったわ!だというのにお前は、きょとんとした顔をするばかりで、お前はお前はお前はあああ
なんでぼくばっかりなんだ!?どうしてぼくばっかりがお前なんかのことで煩悶をしているんだ!?どうしてお前はぼくを見ない!
ぼくのほうが馬鹿みたいじゃあないか いいやばかだ 馬鹿みたいに焦がれてる お前如きのせいで、このディオが馬鹿になってしまった!でもこんなぼくに、お前はやっぱり気付いていない!ぼくの億倍お前はバカだ!
くそ、くそ、どうしてそんな男にこのディオが
だってジョジョが急に優しくなくなるから ぼくに興味を示さなくなるから 
兄弟?親友?そんなもので足りるわけがあるか!
お前はそのでかい図体にしまってある感情の全てを、このディオに捧げるべきであるのだ!でなければぼくが報われない!こんなに他人を欲しがったことなんて、人生で一度もない!
ぼくはお前が お前が、おまえ


・好きだとかうわああなんだよ好きってうわああああばっかじゃないのかぼくもあいつも


・打ち止め
1日たってようやく落ち着いた。我ながらよく立ち直れたものだと思う。

前回の日記ほど破り捨ててしまいたいものもこの世にはないのだろうが、朝方に衝動的に書き殴ってしまった1文も含め、やはり戒めとして残しておくことにする。自分の情けなさも認めてやらねばな。真に強さを持った人間とは、己をよく知り律することの出来る者をいうのだ。ぼくはまだ若い。着実に、そういう人間になってゆこうと思っている。

死ぬほど思い出したくない昨晩の記憶だが、やはりこれも戒めとして記しておくことにする。そしてこの日記はここで打ち止めだ。もうこんなものを記す必要などなくなったのだ。

昨晩は日記の書き途中にあまりに巨大な衝動に襲われて、そのままジョジョの布団に潜りこんでみたわけであるが、なんやかんやで約ひと月振りにぼくを抱かせることに成功した。
本来なら喜ぶべきことである。結局お前はぼくから離れることができないのだと、指を差してあの男を嘲り笑うべきなのである。
けれどそれはできなかった。ぼくの方にもそうした心境にはなれない事情はあったのだが、当のジョジョが、どうにも。そうしてぼくと離れることができない自分、というものを、受け入れ始めた雰囲気がある。なんだろう。本当の本気であいつは、ぼくが好きなのだと言っていたのだろうか。
まあ、ジョジョの心境など考えても仕方がない。ぼくはやはり、ぼくらの間に愛なんてものが生まれるわけがない、とは思っているが、そこにどんな感情があったってぼくらの関係はなるようになる形で続いてゆくのだろう、という確信がある。ベッドでジョジョと布団の取り合いをしている時に、なんとなくそう思った。

なるようになる、か。便利な言葉だよな。そうやって納得をしておけば、思考を放棄する言い訳になるのだから。
ただ今回はその言葉に甘えさせてもらうことにする。もうジョジョのことを考えて馬鹿になってしまうのは嫌だ。
ジョジョを堕落させるためにぼくはぼくを抱かせ続け、あいつはぼくに欲望を押し付けて紳士を目指す。
うん、それでいい。愛だの恋だのを挟むよりも余程、納得ができる。

大体に於いて、ぼくの中に他人を「好き」だと思う感情などあるわけがないのである。ゴミカスに愛情などを抱けるものか。ジョジョに限ったことではなく、ぼくにとっての他人とは悉くがそれである。
だから昨日この口から滑り出した「好き」だなんて、きっとなにかの間違いだ。ついでにジョジョが言ったそれも単に熱が生み出した妄言だ。
だって好きだなんて。ぼくとジョジョが想い合っているだなんて、そんなわけが

「――っ!?」
「ご、ごめんよ。鍵が開いていたものだから、つい。もしかして勉強してた?」
「……ああ、まあな。で、何か?ぼくの部屋に不法に侵入しなければならないような用事とは、一体どんなものなんだい?」
「そんな言い方しなくたっていいじゃあないか。そりゃあ、勉強の邪魔をしてしまったのは悪いと思うけど」
「ま、待て!!」
「へ?」
「ちょ、ちょっとまて、すぐに片付けるから、それまでこっちに近寄るんじゃあない」
「あ、もしかして日記でもつけてたのかい?あはは、そういえば君、几帳面だものね。続いてる?ぼくも昔日記帳を買って貰ったことがあるんだけど、5日も経てばすっかり落書き帳になってしまってさ――」
「ええい、うるさい!ぼくと会う前の君の話になんて、興味はないぞ!……よし、いいぞジョジョ、ぼくに近付くことを許可してやろう」
「……ふふ」
「ジョジョ?」
「いや、ごめん。君のそう、偉ぶった物言いをさ。昨日までのぼくは、それも君の個性だと思っていたけれど、どうしてこんな言い方しかできないんだって、うんざりしていたところもあったんだ。でもなんだか今は、ちょっと可愛いなって思っちゃって」
「……昨日の今日で、単純な男だなぁ。思い込みが激しいとその内痛い目を見るぜ。ただでさえお前、損をする性格なんだから」
「心配してくれてる?」
「まさか。で、用事って一体なんなんだい」
「ええと……」
「……したいのか?」
「へっ!?いっ、いや、そうじゃあないんだ。それこそ昨日の今日だしね。あ……でも君がしたいのなら、ぼくはどれだけでも」
「結構だっ!ひと月分を取り返すどころか、向こう3ヶ月ぶんくらいはやり倒しただろう!暫くお前のペニスなんて見たくない!」
「だからそう、明け透けな物言いはよしてくれと!」
「ふん、なに純情ぶってるんだか。ぼくが飛んじまうまで離してくれなかったくせに」
「だから、ああもう……じゃあさっと用事だけ済ませるよ。ええと……」
「……ジョ、っ」
「あ――あはは……おかしいね、昨日は沢山、もっとすごいことをしたのに。おでこにキスするだけのことで、こんなにドキドキしちゃうなんて」
「ま、まさかこの下らないキスが、お前の用事だとか言うんじゃあないだろうな?」
「……本当は君の顔を見に来ただけだったんだ。寝る前にもう一度、見ておきたくって。でもいざ君を前にすると、なんていうか、ふふ」
「にやけるんじゃあない!」
「だって照れくさいんだよー!じゃあねディオ、おやすみ!」
「照れるくらいなら、こんな恥ずかしいことなんてするなよな、ばか!」

嬉しくなんてない嬉しくないこれっぽっちも嬉しくないくっそデコが熱くてたまらない
いや額だけじゃあなくてなんか体全体がもうほんと嘘だろなんだこれ昨日あれだけやっただろ!!?
好きとかだからぼくらの関係はそんなんじゃあなくて
ぼくは別にあいつのことなんか
あいつもぼくのことを好きになんてなるわけが
あああもおおなんなんだよジョジョという男はあああああ

 以下判別不能







ジョナサンの意図しないところで勝手にぶん回されてるディオさまとか可愛らしいと思うんですよ!


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