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信じて送り出したDIOが…

「吸血鬼の生態調査に協力をして欲しい」という財団の要請に(とても嫌々ながら)応えたDIOが鞄ひとつ分の手荷物を携え日本を発ち、やがて10日の時が経つ。初日などはある種の解放感に包まれたものだったが、そろそろDIOを欠いた部屋の様子に物寂しさを感じる頃合いだ。
郵便受けに財団の研究所から発送された小包が突き刺さっていたのは、11日目を数える朝のことだった。
一先ずは朝食である。白米と共に昨日の晩飯の残りの惣菜をかっ込み食後の一杯。未だ睡眠を欲している気配がある体に苦いコーヒーを流し込みながら、ソファーに腰かけ貰い物のまんじゅうを齧る。寝入りばなのDIOにぐずぐずと絡まれない朝はとても静かで実にゆったりと過ごせるものだ。しかし10日も続けばベッドの中での攻防が懐かしくもなるものだ。
承太郎。わたしが寝るまで傍にいろ、抱きしめていろ、承太郎。と。
脳裏に蘇る甘えくさった面と声に苦笑を零しながら、俺は半ば存在を忘れかけていた小包を手に取った。片手で持って運搬できるサイズの小さな包みである。そしてとても軽い。簡素な梱包を剥いてみれば、中から現れたのはラベルの貼られていないビデオテープだった。メッセージの一言も添えられていない。正体不明の、テープである。
不信感と、それから得体の知れない不安に眉が寄った。眺めているだけでは何も分かりやしないので、とりあえずテープをデッキにセットする。短い作業時間の最中、瞼の裏をちらついていたのは10日前、不機嫌な顔をしてこの部屋を後にしたDIOの広い背中である。

『行きたくない』

DIOは出発の直前まで、口を尖らせそんなことを言っていた。とにかく面倒で仕方がなかったのだそうだ。その気持ちは分かる。俺だって急にアメリカに来いと言われてもすぐさま首を縦には振れんだろう。日光を避けて移動せねばならんDIOにとっちゃ尚更のものだろう。しかしDIOの体調の調整も込めての要請だ、と付け加えられてしまえば、どれだけDIOが拗ねて頭突きを食らわせてこようとも「送り出す」以外の選択肢を選べなかったのだ。怠惰に日々を過ごしているように見えるDIOが、その実怠くて起き上ることさえ一苦労である身体を持て余ていることを、俺は誰よりも知っている。
そんなこんなでDIOを送り出して早10日。いや11日。何故今更あんな一瞬の光景を思い出したのだろうか、と首を捻りながら、やはり得体の知れない不安を催さずにはいられない。
カップの底に1センチばかり残ったコーヒーを一息に呷る。
そして、再生ボタンを押す。
数秒の暗転を置いて、画面にノイズが走り出す。
次に現れたのはどこかの施設の天井だった。見覚えがあるような気もする。
ノイズ交じりの音声が徐々にクリアになってゆく。
機会の作動音。モーターが回るような音。錆びた金属の関節が、等間隔に軋む音。
水音。濡れた音。甘い呼吸。荒い呼吸。甘い声。――とても聞き覚えのある、濡れた嬌声である。

『はぁ、は……は、ふ……ぁ、あふ、ぅ……』

「……DIO?」
何だこれは、と呟くより早く、画面の中心を占拠するその存在の呼び名が口先を衝いて出た。
DIOだ。
画面の向こうにいるのはDIOだ。
真白の裸体を安っぽい蛍光灯の下に惜しげなく晒しているDIOだ。
皮張りのソファーに深く腰掛けているDIOだ。
機会から飛び出た棒状の突起――モーターの可動音に合わせピストン運動を繰り返す男性器に模したそれを、割り開かれベルトに固定された脚の間に咥え込むDIOがいる。
なんだこれは、どういうことだ。
理解が追い付かない。愚鈍に見引かれた視界の中で、異形のピストンマシーンは無機質にDIOを犯し続けている。DIOの馬鹿みたいに綺麗な面は、12日前の夜、共に沈んだベッドの中で見せてくれた表情に緩んでいた。与えられる快感を享受しながら、どこか安堵を催しているようにも見える表情に。

『あっ、あ……ん……なんだ、それは……ろくが……?ろくがとは、いったいっ……ぁ……あっ、ふぁ……ん……じょうたろう、に……?』

熱に潤みあちこちに彷徨っていたDIOの視線が、だらりとふしだらに俺を射抜く。自動撮影の類ではないようだ。DIOの視線の先には、ビデオを回す何者かがいる。DIOの痴態を眺める、俺ではない男がいる。

『だ、だめだ……やめろ……あれはああ見えて、ぁっ、と、とても、純粋なおとこ、だからぁ、あっあっ……!な……泣くやもしれん、っ、あ、あぁ、やっ、ま、まてっ、ぁ、は、はやいっ……も、もっと、ゆっくりぃぃっ』

モーターの音が一段派手になり、DIOの腰が浮き上がる。凶悪に太い突起物が後孔を出入りするたびに、入口の肉が捲れ上がる。その上では陰嚢と勃起した性器が揺れていた。物欲しげに揺れるDIOの腰の動きに合わせるように。

『あっあっひっ、お゛っ、ふ、ぁ、ぐっ、あ、ああっ、ち、ちがう、あっ、ちがうのだぞっ、承太郎っ!!こ、これは、だなっ、わたし、わたしがぁ、熱をっ、だした、からぁ……!!あ゛……ひっ……あ……あ゛……さ……下げる、ための、ちりょうで……わたし……』

痙攣するように震える指の背を食む口先は、艶めかしく赤かった。逞しい胸の頂で、そこだけが妙に可憐ぶった小振りの乳首が刺激を欲するように勃起をしている。一心にこちらを見つめる赤色の双眸には、涙の膜が張っていた。
DIOは感じているのだ。とんでもなく感じてしまっているのだ。そんなことはこの有り様を見れば分かる。どれだけ俺が、DIOを抱いてきたと思っているのだ。
唇を噛んだ。鉄錆びた味がした。
画面のDIOは尚も呂律の回らない舌で言い訳を繰り返しながら、必死こいて片手で己の股間を押さえている。勃起して先走りを垂れ流す性器を隠そうとしているのだろう。規格外のサイズのそれが掌一つで隠し通せるわけがない。作り物染みた美しい掌の下から張りつめたそれが覗く光景はあまりにも淫猥だ。

『やっ、いやっ、あああっとめろっ、とめろ早くっ、はっ、はやく!!ろくがでも機械でもいいからはやくはやくっ、あっあひっや、あ゛っ、あ゛ぁ!!?ちがうっ、ちがうぅぅ!!そっちじゃないっ、ちがう、あ、あふっ、あ、なんでこんなにぃっ、お゛っ、お゛ふっ、あ゛、ひぁっ、や、やらぁっ、こわれひゃっ、あ、あ、や……!』

モーターが今にも請われちまいそうな音を立て、異物は人間には到底不可能な速度で激しくDIOを凌辱する。DIOは必死に逃げを打つべく全身をくねらせるも、足首を拘束するベルトが決してそれを許してはくれない。むしろ動けば動くだけ中に当たる角度が変わり、新しい快感が生まれてしまうのだろう。涙に濡れた真っ赤な顔はさながらセックス中毒のそれであり、溢れる先走りが白魚の手をべたべたに汚している。
それでもDIOは、決してカメラから目線を外そうとしないのだ。
必死に俺を見つめているのだ。
「DIO、」
呼び慣れた名を呟き、思わずテレビへ手を伸ばした。すると俺の手を手繰り寄せようとでもするかのように、モニターのDIOも震える腕をこちらへ向かって伸ばしてくる。

『たすけろ、じょうたろう』

そんな、とてもとてもDIOらしくない泣き言を零しながら。
このビデオが撮られたいつかの日、俺が一抹の寂しさを持て余していた11日の間のいつかの日、遠いアメリカの地でDIOは、俺に救いを求め泣いていた。

『あぁああいやぁああ!!じょーたろっ!!じょーたろうぅぅ!!か、帰りたいっ……!わたしっ、あ゛っ、あひっ、じょうたろっ、は、はやくきて、あっあっはやくっ、承太郎、承太郎、承太郎!!っひ、っく、ぅあ、ああじょーたろぉっ、や、く、くるっ、あ、あ゛、きひゃうぅぅ!!いやぁっ、もういやぁあぁぁ!!このDIOはっ、このDIOはぁっ!!』

「~~っDIO!!!」
やめてくれ。

『ひ、あぁ、あ゛あ゛あ゛』

「DIO!!!」
机を殴りつけた。リモコンがフローリングに転がる音がする。弾き飛ばされたマグカップが割れる音がする。数秒遅れて、両手の骨がじんと痺れた。
もうやめてくれ。
いつかのDIOが必死こいて俺へと伸ばしていた真白の腕は、くたりと重力の方向へ萎れていった。とうに視線はカメラから外れている。ソファーの背凭れに預けるように首を反らせ、荒い息を吐いている。握りこまれた性器は痛ましく震え、未だ精液を吐き出せずにいるようだ。ドライでイってしまったのだろう。頭がいかれそうになるくらい気持ちが良いのだと、DIOが俺の腕の中でそう嘯きながら笑ったいつかの夜を覚えている。
もうやめてくれ。
DIOを犯す機械は止まらない。威力を緩めながらゆっくりと、しかし確実にDIOを凌辱し続けている。
もう、やめろ!

『あ……あ……すごいぃ……あ……ああ……』

甘ったるい、声だった。
とろけるような、顔だった。
理性を手放し快感の虜となったDIOはいつだって、砂糖菓子のようにどこもかしこも甘くなる。俺だけが知っていることだった。俺だけが知っていればいいことだった。
画面の向こうで善がるDIOは、俺だけのものであるはずだったのだ。

『あっ、そこ……あっ、あは……あ……あ、ああ……わ、わたし、ずっと、イってる……すごい、すごい……あ、ああっ、あ、あ゛~……』

とうとう自らの性器を扱きだしながら、DIOはうっとりと目を細め快感に耽っている。唾液と涙を垂れ流す面には最早、正気の気配などはない。
この淫乱、気持ちが良ければなんでもいいのか、お前は、お前は!
DIOの窮状を知らなかった罪悪感を押し退けて、そんな怒りばかりが沸いてくる。ただ俺はそれを喚き散らすことができないのだ。勃起してしまっている。凌辱されるDIOの痴態に、興奮してしまっている自分がいる。
別の罪悪感が腹の中をずたぼろに荒らしてゆく。奥歯を食いしばり熱を堪える。しかし目を閉じることは出来なかった。甘ったるく喘ぐ向こうのDIOから、どうしても目を反らせないのだ。

『ぁ、え……あ……承太郎……じょうたろう、に……?ぴ……ぴーす……?』

DIOではない男の声が聞こえる。カメラを回している男だ。内容は聞き取れない。呆けた面で大人しく男の言葉を聞きうけたDIOは、俯いていた頭をゆっくりと起こし再びまっすぐにカメラを見る。
泣きじゃくった痕跡が生々しく残る痛ましいかんばせは、しかしどうしようもなく淫売のそれである。
唾液に濡れた唇に弧を描かせ、DIOはぎこちなく笑う。大儀そうに持ち上げられた両手で、場違いに無邪気なピースを作りながら。

『じょーたろ……あっ、あっ、ど、どうしよう、承太郎、き、きもちいいのだ、とても、とても……』

ジーンズに押さえ付けられた股間が痛かった。思わず手を伸ばす。ボタンを外しジッパーを降ろすだけの動作が中々上手くいかない。

『さっきは、わたしらしくないことを……あまりにも……あっ、ん……は、はずかしい、な……ちゃんと忘れておくのだぞ、承太郎……あ……あっ……』

やっとのことで下着までを下ろせば、みっともなく勃起してしまった性器が勢いよく飛び出した。あまりにも情けない、あまりにも、あさましい!フローリングに座り込み、片腕を枕に机へと顔を埋める。依然頭上から降ってくるDIOの声は、キスをしてやりたくなるくらい甘ったるい。

『しんぱいなどは、しなくてもいい……このDIOは、生きてゆこうと思えば、どこでだって……あは、ぁ……承太郎が、となりにいるに越したことは、ないのだがな、あ、あっ、ふふ……』
「……DIO、」
『じょうたろ……すき……すき……すきぃっ、ぁ、あ、あああああああ!!!?』
「っDIO!!!」
『あっ、あひっ、や、やらぁあ、あ、は、はあぁあ、ン…ぁ、あは…!わ、わたしのかたちかわっちゃうぅっ!!あ、あっ、あぁあっ』

顔を上げてみれば、再び激しく動き出した機械に蹂躙されるDIOがいた。やはり泣いている。とろけた泣き顔を晒している。快感を隠そうとしない、はしたない顔である。降ろすきっかけを失い形作られたままの不格好なピースが酷く、酷く、酷く滑稽だ。
「~~!!」
机に顔を埋め直した。現実を拒絶した。そして自慰に耽る。いつになく体積を増したそれを、マスタベーションを覚えたばかりのガキのように弄った。
気持ちが良い。心臓がぶっ壊れちまいそうに、気持ちが良い!!
止めようと思う前に溢れた涙で濡れた袖が肌に張り付き、とても、とても不愉快だ。

『だめっ、あっあっだめだと言って、いるではないかぁ!こんなにされたらぁっ、じょーたろのちんぽのかたち忘れちゃっ、あ、ひぐぅっ、ぅあん、あ゛っ、あ゛!!あっ、あ、はっ……!や、やっぱりいいっ、いいぃっ、もっと、もっとぉお!あは、あは、はっ、じょーたろのよりきもちいい……!』

とんでもない暴言を吐き出すDIOを、頭の中でひたすらに犯し続けた。

『すごいぃぃああぁしぬっ死ぬっ、しぬうぅう!!こんな奥までぇぇ!!も、もうわたしっ、これじゃないとだめぇっ!!もうっ、もうイクっ、でる、でるっ、あっ、ふあぁっ、あ、あ゛、ああああっ、あああああ!!』
「――っ……!っ……っ……!!」

DIOが絶頂に達する声を聞きながら、俺も自分の手の中に射精した。ありえない量の精液が噴出した。手だけではなく床や服まで汚してしまっている。
後に残ったのは舌を噛み切っちまいたくなる程の罪悪感だけだったる。腰の疼きの心地よさが、それを助長してならなかった。

『ぁ、ぁひ……じょう、たろぉ』

もうやめろ。

『あ……あはは、は……わ……わるいな、承太郎……』

やめてくれ。



「――承太郎!」
「~~!?」
耳を劈く大音量に、意識は一瞬にして覚醒した。
慌てて体を起こせば体中で筋肉が軋みを上げた。枕になっていたらしい片腕などは酷く痺れ、あと1分も経てば激しいこそばゆさに襲われること請け合いである。
どうやら俺は、居間のテーブルに突っ伏して昼寝をしていたようだった。窓の外はぼんやりと月が浮かんでいる。
「まったく、貴様という奴は!帰る時には電話を寄越せと言っていたこと覚えてやっていたから、このDIOはわざわざ掛けてやったというのに。10回もだ、10回も!まったく!一向に出やしないからもしや死んだかと思いきや、貴様とくれば!何を呑気に昼寝なぞを!」
「はぁ……?お前、一体何の話を……」
「……ジョセフより先にボケてしまったのか、承太郎?」
「いてぇよおま……っ!?」
DIOの爪先が脇腹にめり込んだ。反撃に脛を軽く殴り体勢を整えようとした拍子に、下半身が違和感に襲われる。妙に湿っていて、酷く気持ちが悪いのだ。
「……」
「承太郎?」
大変覚えのある感触である。訝しげに首を傾げるDIOを無視し、俺は再びテーブルに顔を埋めた。それとなく股間を見てみれば、出てしまったものがジーンズにまで染み出している様子はない。一先ずの安心に息をつき、顔を傾けDIOを見る。DIOは11日前、この部屋を後にした時と同じしかめっ面でじっと俺を見つめていた。
「……、」
「先程からどうしたというのだ、貴様は。もしや本当にボケてしまったのではあるまいな。たった10日ばかり会わないうちに」
「――DIO!」
「じょ、承太郎?」
靄がかっていた記憶が晴れた瞬間、居ても立ってもいられなかった。DIOの腰にしがみ付き、厚手のコートに覆われた腹に顔を埋める。ふわりと鼻腔を擽るDIOの香りがどうしようもなく愛おしかった。
「なんだ、怖い夢でも見たのかい、お坊ちゃん?」
わざとらしく優しげな声と共に降ってきた大きな掌が、乱暴に俺の髪を掻き乱す。反抗する気にはならなかった。普段なら腹の一つも立とうという態度すらも愛おしくてならなかった。埋めるだけに飽き足らず力任せに額を押し付ければ、DIOはいよいよ困惑したような息をつき、打って変って壊れ物を扱うようにこの頭を撫で出す始末である。
「そんなに寂しがるくらいなら、電話でも寄越せばよかっただろうに」
「ああ、そうだな……お前、あっちではどうだった?」
「どうとは」
「実験だのなんだので、酷いことはされなかったのか」
「はぁ?別に、変わったことはなかったぞ。ちょっと細胞をくれてやって、薬のサンプルの経過を見てきただけだ」
「そうか。……そうか」
「承太郎は、どうしてしまったのだろうなぁ」
顔を傾け盗み見たDIOは、かつての帝王の面も忘れすっかり平和ボケした穏やかな笑顔を浮かべひたすら俺を撫でている。今更ながらに気恥ずかしくなるも、もう少しDIOを腕の中に閉じ込めておきたかった。ので、目を瞑りDIOにしがみ付くことに専心する。
それにしてもため息が漏れるばかりである。信用のおける財団を悪役にしてしまったことや、いくら妄想の中でとはいえDIOをあんな形で凌辱してしまったこと。罪悪感に歯止めがきかなかった。11日間も、DIOとセックスをすることはおろかキスをすることすら叶わなかった。たったそれだけのことで爆発してしまう性欲の若さがたまらなく居た堪れない。
「どれ、10日ぶりにこのDIOを抱くか、承太郎?」
「……いや、先に風呂に入らせてくれ」
「この期に及んで私をないがしろにするつもりか、承太郎め」
どうやら上機嫌らしいDIOに頬を引っ張られながら、一先ず濡れた下着を始末する算段を企てた。




夢オチです


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