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2

「わたしより花京院か。あの男の方がいいのか浮気者」
「お前にだけは言われたくねー」
花京院を送り届けた後。再び帰還したリビングでは、すっかり目が覚めたらしいDIOが俺を待ち構えていた。でん、とソファーのど真ん中で足を広げて座りながら、片手には缶ビール。恐ろしくふてぶてしい姿である。しかし一週間ぶりに目にするものであれば懐かしさや愛しさの方が勝ってしまうようで、小言を繰り出す気分にはなれやしないのだった。
「ま、そんなことはどうでもいい。おかえり承太郎、長旅ご苦労」
「ああ、ただいま」
「おい耳元で喋るなよ。くすぐったいじゃあないか」
「んな嬉しそうな顔で何言ってやがるんだよ」
「なにを言う。貴様の方がよっぽど嬉しそうな顔をしているくせに」
柔らかな感触が頬に触れた。こちらからは、耳の端にでもキスをくれてやる。尚もくすぐったいくすぐったいと喚くDIOは、それでも俺から離れようとはしない。それどころか背中へと両腕を回してくる始末である。
DIOの抱擁はいつだって骨が軋む。つまりDIOと抱き合うにはそれなりの痛みが発生することを覚悟しなければならないのだが、それほどまでに自分の方へと俺を引き寄せようとするDIOへの愛しさの前では、そんな痛みなどはないも同然なのだった。
今だって当然痛い。一週間分を取り返そうとするかのように、俺をすり身にでもしちまうつもりかってくらい全力で抱きしめに掛かってきやがっている。体勢が崩れた。折れた片膝がソファーの座面に突き刺さり、スプリングが軋む。とっさに背もたれへと両手を付けば、まるで狭いソファーの上にDIOを拘束しているような絵面になる。俺の両腕の間で、DIOはにんまりと笑っていた。くそ、可愛いな畜生。
「で、するのか?」
「……する」
「よしきた!」
やたらに溌剌とした声の勢いとくれば、今にも膝を叩き出さんばかりである。名残もクソもなく両腕を引込める仕草といい、到底これからセックスに及ぼうなんて雰囲気ではない。
だというのに、今にも口笛を吹きださんばかりの喜色が滲む赤い唇から、ちらっと覗く鋭い牙。DIOが人間ではないことを証明するその部位だけが、室内灯に煌めいて場違いにいやらしい。
「ンッン~、実に一週間ぶりのご対面だなぁ!元気にしていたか、承太郎のちん、」
「やめろどこに話しかけてやがるんだてめぇは」
「そんな怖い顔をすることもなかろうに。ちょっとしたジョークではないか」
「萎えるからやめろ」
「つまらん奴ぅ」
手早く俺の陰茎を下着から取り出したDIOは、それと顔を見合わせるように差向いになる。そして「なー」とか言いながら、小首を傾げだす始末だった。思わず奴の頭をはたいていた。人の性器捕まえてなにしやがるんだてめーは。俺が馬鹿みてぇじゃねぇか。
「ふふん、ふにふにだな、承太郎」
「……いいからさっさと舐めるなり扱くなりしろっつーんだよ。んな見つめられちゃあ居心地悪くて仕方ねぇぜ」
「承太郎は仕方のないやつだなぁ」
そりゃあこっちの台詞だぜ。
そうやってまた頭をはたいてやる前に、DIOは陰茎の先端に口付けた。ろくなことを言わない唇だとは分かっていても、こうも愛おしげに労わるようなキスをされてしまえば、文句も喉の奥へと引っ込んで行ってしまう。なんつーか、愛されてるんだなぁとかなんとか、そういう感慨が頭いっぱいを埋め尽くして。ばっかばかしくて仕方のねぇ話だが。
「お、ちょっと硬くなったぞ、承太郎」
「いちいち実況すんな」
どこまでも人を素直にときめかせ続けるのが下手な吸血鬼である。本当に。


ソファーの背もたれにくったりと寄りかかったDIO。惜しげなく開かれた足の間には、すっかり膨張してしまった俺の陰茎が刺さっている。ほんのりと色付いた白い肌には、脂汗が浮いていた。
「――っ……」
「ど……どうした、承太郎……まだ半分も、っ、入っていないだろう……」
「……あー……すっげぇきついぞ……なんだこれ……」
「一週間ぶりだからな……ま……わたしが、浮気などしていないことは、よぉく分かっただろう……?」
「端からんなこと、疑っちゃあいねぇよ……てめーが俺しか見えてねぇことくらい、とっくに……っ、おいだから締めるなっつってんだろうが……!」
「う、うるさいな……ふざけたことを言うきさまが、承太郎が、悪いのだ……」
「だぁから締めるなって……」
――きつい。物凄くきつい。アメリカへ発つ前は吸いつくように俺を迎え入れていたはずのDIOの体内は、たった一週間のうちに別人のように固く閉ざされてしまっていたのであった。
一週間という時間が経っていることも大きな理由であるし、しっかりそこを慣らす余裕が俺にもDIOにもなかったことも痛い。体勢だって、例えばDIOをひっくり返して後ろから突っ込むとか、もっと楽なものがあったのだろう。
それでも体勢を入れ替えるたった数秒の間だけとはいえ、久々に得た繋がりを断ち切ってしまうことは辛い。DIOも同じことを考えているに違いない。蹴り1つで俺を突き放せる馬鹿力を持っているくせに、酷い圧迫感を軽口でやり過ごしながら、ただただじっと耐えている。
白い額に張り付く金髪を掻き上げて、現れた肌へとキスをする。DIOは涙の滲む両目を瞬かせ、ぼんやりと俺を見た。
「……一旦休憩だ」
「そ……そうだな……時間などは、腐るほどあるのだからな……」
「はー……いけそうになったら言えよ」
「うむ……」
上半身を倒し、背もたれへ額を押し当てる。不安定な体勢に腰や腿周りの筋肉が軋みを上げているが、こうしていると幾分かそれも和らぐようだった。
「……お前、今回は大人しく家で待ってたんだな」
「ん……?……ああ、イタリアか?」
「またジョルノ君に迷惑かけてるもんだとばかり思ってたぜ」
「迷惑というがなぁ……あれはわたしに迷惑を掛けられて喜ぶ、貴様と同じ種類の人間であってだな……まあ……一応、連絡はしてみたのだ。しかし忙しいから来るな、とか言われてしまってな……それでも無理を言えば、奴は口ではなんだと言いつつも、迎えを寄越すのだろう……そういうところも、おまえとよく、似ている……んっ……んん……」
衣服越しに胸の尖りを引っ掻くと、DIOは悩ましげに身を捩る。間髪を入れず仕返しだ、と言わんばかりのDIOの唇が俺の首筋を啄んだ。じんじんと熱い。あまり目立つ痕になっていなければいいものだが。
「……アメリカは……?」
「ん……あっちこそは、連絡をすれば二つ返事で、手配をしてくれるのだろうが……お前がいる国に行くというのも、おかしな感じがするし、それに……そうだな、わたしは……」
「DIO?」
「わたしは……このみすぼらしくて狭苦しい世界の中で、お前を……承太郎を、待っていたかったのだろう、なぁ……」
「……どっかに頭でも打ったのか?それともあれか、とうとうボケたのか?」
「うるさい……くそ、やはり心情の吐露などは、するものではないな……あまりに馬鹿馬鹿しい……っ、ぁ、じょ、承太郎、」
「舌噛むなよ……ちょっとばかり、奥行くぜ……」
「ひっ、ぁ、あっ、は、ぁ……~~」
片手でDIOの右足を抱え上げ、もう片方で後頭部を抱え込む。熱い息に首筋を擽られ、下半身に溜まる熱が重みを増した。
「あ、はぁ……こういうのが、すきなのか、承太郎……若いな……」
「うっせー……つーかお前、なんで人の半纏着てやがるんだ……熱いも寒いもねぇんだろうが……」
「ふん……承太郎が恋しいのだーとかいうわたしの感傷など、情緒を解さぬクソつまらない男である貴様には分からんのだろうな……やーれやれだぜ……」
「……人の真似すんな」
「ぅあっ、あ……!ああ、そ、それっ、ひ、ぁふ、ぅ、ぅぅ……」
ゆるく頭をもたげているDIOの陰茎を扱きながら、また少しだけ、熱い内壁を押し開く。肩を丸めたDIOは、たまらないと言わんばかりにぎゅっと目を瞑っている。そして顔の半分の半纏の袖に埋め、なにやら嬌声を飲み込もうとしているのだった。
恥ずかしいのだろう。恋しいと口走ってしまったことや、その前のあれこれが。しかしそんなのはこっちも同じだ。
普段から困った野郎で、人の期待を裏切ることだけは得意で、それでも腹が立つほど俺を惹きつけて止まないひねくれた吸血鬼。しかしどうやら文字通りの人でなしであるこの男にも、心の奥底には一掬い分程度の純真が残っていたらしい。DIOの零した睦言とは、それらを集めて固めたものであるのだろう。そんなとんでもない希少価値を秘めた本音を、真正面からぶつけられた俺の身にもなれというのだ。
「……このまま一気に全部入れてみるか、DIO」
「お、お前に、任せる……」
「…………」

DIO――DIOよ。一体お前はどうしてしまったんだ。どこでそんな殊勝な態度を学んできたっていうんだ、そんなに俺を照れ死にさせたいってのか、この野郎。

「あぐ、ああっ、は、ん……!」
「っ、く、ぅ……!!」
ばたつく足を押さえつけ、陰茎の全てをDIOの体内に収めきる。しかしそのまま落ち着くことはできなかった。気が急いている。早鐘を打つ心臓が、焦燥感を煽ってならないのだ。
入り口のぎりぎりまで引き抜いて、もう一度全体を突き入れる。一度開かれた後孔は先程とは比べ物にならないほど容易に、勃起した性器を飲み込んでゆく。熱く爛れるような内壁が、容赦なく性器を締め上げた。波のように押し寄せる快感に背筋が震え、目の奥が痺れた。一週間ぶりに味わうその締め付けは、とにかくたまらないの一言である。
「承太郎っ、くっ、おい、ま、待てっ、ひっ、ま、まって、と、言っている……!」
「っ、んだよ、DIO……!よくねぇのか、お前……!」
「よ、よくないことは、ないっ!ただ痛いのだ!そんなでかいもので、っ、ご、ごりごりするから……!だからもっと、もっと、ゆっくり……!」
「……『奥をごりごり突かれるのが好きなのだー』」
「!!?」
「とか、なんとか……言ってたのはてめーだったような、気がするんだがなぁ、DIO?」
「い……いつの話を持ち出すのだ、貴様という奴はっ、ぁあ、ああっ!?は、ああっ、や、やめろっ、そこ、あ、あっ、あっ」
徐々に背もたれから滑り落ちるDIOの体は、今にもソファー自体からも落ちてしまいそうになっていた。不安定に揺れる体を抱き締める。数拍遅れて、DIOの両腕が俺の背中へを回される。既に普段の横暴なまでの力はなく、ただやっとのことで服を掴んでいるだけの、指先のいじらしさといったらない。
「はーっ……あ、あは、ぁ、あ……すごい……すごいぞ、じょぉたろぉ……中が、お前で広がって……なにやら、とんでもなく奥の方、までぇ……」
「だから……実況はやめろって、言ったろうがよ……」
「だ、だって、こんなにすごいのに、ふぅっん、んん、んー……」
後頭部の髪を引く。そうして強引に上を向かせたDIOの唇を、舌と唇でぴっちりと塞いでやる。うっそりと細まった瞳は閉ざされることもなく、至近距離でじっと俺を見つめていた。目を反らす理由もないので、見つめあったままにキスをする。その間も下半身の動きを止めることはできず、いいところを掠める度にDIOの体はびくびくと震え、赤い瞳からは透明な涙が滴った。
DIOもろとも、とても駄目な男になっているという自覚がある。それでもこの性交の快楽に、湧き出て止まらない吸血鬼への愛しさに、打ち勝てるほどの理性などは俺の中に存在しない。どうせこんな言葉を口にする余裕などもないのだ。頭の中でくらい、どれだけだって惚気てやるともさ。
「ぁ、はふ、ぁ、あ、じょ、承太郎っ、く、くるっ、あ、あ、ぁ!!」
「ああ……さっさといっちまえ」
「んっ、ぅんっ、は、す、すごいのが、くる……!あああっ、あ、あ……――!!」
「……!!」
体内を犯す陰茎を狂ったように締め付けながら、DIOは大量の白濁を吐き出した。腹の辺りにべったりと濡れた感触が張り付いている。決して気持ちいいものではなく、むしろ不快であるはずなのに、全身が興奮に震えている。
「っ……!おいDIO、お前まだいけるな?」
「~~っ、当たり前、だっ!!」
「っ、いい返事だ!」
「――!!」
カーペットを適当にめくり、現れたフローリングへと引き寄せた体を組み敷いた。縫い目のような傷の残る白い首は上を向き、赤い唇からは言葉の代わりに熱い息のみが漏れている。まるで無理矢理犯されているような、哀れさを誘う姿だった。そんな姿にもどうしようもなく興奮するなんて、どうかしてる、どうにかしている、この男のせいで、俺はすっかり頭のどこかがおかしくなってしまっている。
「あは、は、はぁ、は……!必死だなぁ、承太郎……!」
「必死だよ、てめーが欲しくて仕方ねぇからなぁ、この野郎!」
「いいっ、いいぞ、承太郎……!好きなだけ、くれてやる!だから貴様もっ、わたしに、このDIOに!貴様の全てを捧げるのだっ、承太郎、っ、じょう、たろうっ!!」
「これ以上何捧げろってんだよ、ごうつくばり……!」
「あぁあ、ああ、っ、もっとだ、もっと、承太郎……――!!」
欲しがるばかりの唇に、再びキスをくれてやる。獣のように貪り合いながら、ただひたすらにDIOを求めた。DIOからも求められている。幸せだ、と思った。本当に、ただただそれだけを。



「いつの間にかわたしは、承太郎のではないと満足できない体になってしまっていたのだなぁ」
「別に俺だけで構わねぇだろうが。浮気の予定でもあるってのか」
「いいや、ないぞ?お前はわたしがそういうことをしないと、信用をしているのだろう?まあ信用などをゴミカスのように裏切ってやるのも乙ではあるが、これでもわたしは空条承太郎という男をとんでもなく愛してしまっているようだからなぁ。そのような些細な期待くらいには、応えてやろうではないか」
「……てめー本当にどうしたっつーんだよ。なんか、あれか。素直になる薬的なものでも飲まされたのか」
「……何故鳥肌を立てているのだ無礼者」
「いや……盛り上がってるときは、なんつーかまあ、ひらすら嬉しいだけだったんだが。ちょっと落ち着くとなぁ、なんか、気味が悪くて仕方ねえ。だってお前、そんなこと言う奴じゃあなかったろ?」
「…………」
「無言で蹴るなよ、痛ぇ」
「別に――深い意味などはない、あるわけがない。ただ……ここ数年で息子だのなんだのと、わたしの対人関係も広がったものではあるが、やはりわたしにとっての基準点とは、わたしにとっての――世界、とは。今のところはどうも、お前であるらしいので。……なんというか、わたしはお前という男が好きなのだなぁと思えば、どうにも、馬鹿馬鹿しいことを言いたくなってしまうのだ」
「よく分からんが、まあなんだ、つまりはいつもの気まぐれってわけだ」
「ああ、もうそれでいい」
2人してソファーに持たれ、無為に時間を食い潰してゆく。シャワーを浴びたいし、着替えもしたい。けれど今はそれよりも、このただ俺とDIOだけがいるだけの世界というものを、壊したくはないと思う。DIOがそれを望んでいないから、という以上に、俺がまだこの世界に留まっていたいのだ。
「……今度は2人で旅行にでも行くか」
「珍しいな、お前がそんなことを言いだすなんて」
「ま、偶にはな」
「ならイタリアへ行くぞ、イタリア」
「死ぬほど行ってんだろうが、お前」
「だがお前とゆっくり見て回ったことはないだろう」
「そういうこと、俺としたいとか思ってたんだな」
「いじらしかろう?」
「自分で言うんじゃあねぇぜ」
どちらからともなく口付ける。嵐が去った後の何とやら、触れるだけのキスはあまりに温いものであったが、それでも妙な清々しさと幸福に胸中は満たされてゆくのだった。
唇が離れ、DIOが笑う。その笑顔を愛しく思ったので、もう一度口付けた。しばらくはこの堂々巡りから抜け出せそうになさそうだ。







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