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承太郎の陰茎が、カリ首で入り口を押し広げるように浅い場所ばかりを行き来している。文句を言ってやろうと口を開きかけるも、恐らくその瞬間を見計らって奴は奥の奥を突いてくる。息が詰まった。暴力のような快感に全身が痺れた。
承太郎の両手で割り開かれた両足が、耐え切れぬと空気を蹴りつけている。渾身の力で握りしめたシーツには穴が開いたようだった。だめだ、他人事だ。なんというかもう、承太郎を咥え込んだ箇所でしかものを考えられなくなってしまっている。とにかく、もっと欲しかった。こんな、一度きりの刺激では、全く足りやしなかった。
「～～あっ、ひぃっ！？ぁっ、あっ、あああぁあ……！」
なのに、抜けてゆく。承太郎の質量がそっけなくわたしの奥から去ってゆき、亀頭を淵の辺りに引っ掛けるように停止した。
「ねっ、ねっちこい……！あまりにもッ」
「よさそうな顔して何言ってやがるんだ」
「よくなどないッ、っ、ぁっ、やめ、やめろこのばか！そ、それは、嫌だッ！いや、なのだッ！」
「喜んでるようにしか見えねーぞ、馬鹿」
カリ首の辺りで入口を愛撫される感覚は、それだけであれば悪くはない。けれどわたしは既に、とんでもなく深い部分を抉られる快感を知ってしまっている。承太郎の陰茎がどれだけ太くて硬くて大きいのかということも。なので足りない。まったくもって足りやしない。中途半端な快感を与えられればられるだけ、それ以上のものへの期待に腰から下が揺れた。
「な、にを、承太郎、おまえぇっ、意地に、なってぇ、あっ、あっ、うぅっ」
「さっさと終わらせちまうのも、もったいねぇ話、だろう」
「だからといって、こんなぁっ、あ、っくッ、くそっ、なんと、せせこましいおとこっ、あっ、あああぁああッ！！？」
２度めのインサートにも、前触れはなかった。さっきと同じだ。わたしがちょっとばかり気を抜いた隙を狙って、この男は、この男は――
「あ、あ、や、いや、ぁ」
脳内を蝕み始めていた陶酔が、再び波のように引いてゆく。またしても承太郎は、たった１度きり奥を突いただけで、さっさと入口へと戻っていってしまったのだ。抜けかかった亀頭に入口を割り広げられて酷く苦しい。そんな箇所はどう考えたって、承太郎には丸見えだ。
「み、みるな、あほっ、承太郎の、クソ野郎ッ」
「あんまきたねー言葉遣うなよ。萎えるだろ」
「こんなにでかくしておいて、何を言うッ！しらじらしっ、ぁあっ、ぅ、だ、だからぁ、それ、ぇ、いやだと、わ、わたし、なんどもぉッ、ぁ、あぅ……」
浅い場所をひっきりなしに承太郎の陰茎でこすられる。同じだけの勢いで奥を突いて欲しいのに、承太郎はやたらに雄くさい顔で笑いながら、見当違いに頭を撫で出す始末である。武骨な指が、馬鹿みたいに優しくわたしの髪を掻き上げる。露わになった生え際を撫でられる感覚にため息が漏れた。大変に、心地の良い接触だった。
しかしわたしが今一番に欲しいのは生温い安らぎなどではなくて、もっと激しい、６０兆の細胞をバラバラにしてしまう勢いの快感なのだ。
頭を振って、承太郎の手を追い落とす。でかい掌が剥がれた頭部が妙に寒々しかったが、そんなものに未練を残してはいつまでたっても絶頂にたどり着けやしない。承太郎が、お、と虚を突かれたような顔をしている隙に手を掴み、焦らされているうちにすっかり勃起してしまっていた自らの陰茎へと導いた。
「わたしのペニスを扱いて、中を、抉れ！お前はそれだけしていればいいッ！もったいないもくそも、まだ夜は始まったばかりなのだぞ、承太郎っ！」
最後に「今日だけはお前のやりたいことの全部に付き合ってやるつもりなのだ」と付け加えれば、承太郎はまぬけと形容することすら憚られる腑抜けた面になる。くそ、そんな顔をするな。初めからそう思ってたわけじゃあないが、触れ合っているうちにそういう気分になってしまったのだから仕方がないだろう、阿呆、承太郎の、あほ。
「――っ」
「顔を赤らめている暇があったらさっさと動け愚図！」
「っ、てめー、っ、くそ、お前、あれだからな、あとから文句たれても俺ぁ聞いてやらねーからな、お前、十代の馬力舐めんじゃあねぇぞ！」
「やれるものなら、やってみろ！わたしを、わ、わたしを――もう一度、殺してみせるのだ、承太郎っ！！」
「～～っ、DIO、おまえ、お前って野郎は、本当に――！！！」
「ひ、ああっ、あ、あぁああ！！！」
粘着質な音を立てながら、承太郎が信じられないくらい奥の方まで入ってくる。さっきよりも深い、さっきよりも、固くて大きい。思わず涎が漏れた。拭う余裕なんかもなくて、きっとわたしはとんでもなくだらしない顔を承太郎の前に晒してしまっている。しかし、それがなんだと言うのだ。わたしはさっきからずっと、浅ましく蠢いていたのだろう結合部を見られていたのだぞ。だから、今更だ。今更承太郎の前で、取り繕わねばならぬものなどなにもない。
「はぁっ、あ、あっ、や、じょっ、たろぉっ、あああっ、だ、だめだ、そんなっ、きゅう、にぃ……！あああっ、ぁ、は、ひっ」
「結局、てめーはっ、入れても抜いてもうるせー文句を、つけやがるっ」
「極端なのだッ、きさまという、やつはッ！あっ、ああッ、あ！？ひ、ぃあっ、あ、そ、そこだめだっ、じょぉたろっ、だ、だめっ、も、もっとこぉ、だ、だんかいを、ふんでからぁっ、あ、あぁっ」
承太郎の律動に合わせてベッドがガタガタと揺れている。振り落されてしまわぬように、わたしは片腕を承太郎の首に巻きつけた。もう片方で、承太郎の手を使って自慰をした。だって承太郎とくれば、手淫も命じられていることをすっかり忘れてしまっているようなのだ。それだけ中を突くことに必死になっている。奴の顎先から弾き出された汗が、わたしのどこかに付着した。
「んな喋ってっと、その内お前、舌噛むぞ……！」
「お、おまえが、ふさげ！」
「ああ？塞いでくださいお願いしますだろうが、DIO！？」
「ひぃいっ、あ、ああはっ、あっ、あっ」
うるさい。うるさい。耳を澄まさなければ分からない程度の機械の作動音しかなかったこの部屋が、すっかり街の雑踏のごとく猥雑な喧騒に満ちている。ベッドの軋む音が聞き苦しい、下品な水音がはしたない、この口から漏れるばかりの阿呆のような嬌声が煩わしい、承太郎の上擦った声が、荒い息が、とんでもない大音量となってわたしの鼓膜に叩きつけられるものだから、耳が痛くて、頭も、頭の中も――、
「じょう、たろうッ！」
「――！！」
うっとおしい承太郎の声と息を封じ込めてしまう為に――という、建前で、わたしは太い首に巻きつけた腕を引き、奴の頭を引き寄せた。
厚ぼったい唇に口付ける。確か、これが初めてだ。承太郎とキスなんかをしたことはない。それどころか、愛を囁き合ったことすらも。すべての過程を吹き飛ばしてせっせとセックスに勤しんでいることが妙に滑稽で、おかしかった。思わず笑みが漏れた。頬の辺りの筋肉が痛い。
「……ニヤニヤしてんじゃあねーよ、こら」
「ん、ふぅ、ん、ん……」
装いきれない仏頂面でなにやらを呟いた承太郎は、片手でわたしの後頭部を拘束して、喉の奥までを犯し尽くすようなキスを寄越した。遠慮容赦なしに突っ込まれた濡れた舌、そして首が仰け反って息の詰まる感覚が、このまま死んじまうんじゃあないかってくらい、気持ちがいい。
しかし、そんな微睡むような快楽はいつまでも続かない。予告もなしに、再び、承太郎の下半身が暴れ出したのだ。
「っ、んっ、むぅ、ぅ、ん、ん……～～！！？」
されるがままにわたしの陰茎を扱く道具となっていた大きな掌が、突如自我に目覚めたかのように陰茎の根元を拘束する。溢れかけていた熱がせき止められて、頭がおかしくなってしまいそうだった。
かぶりを振った。何度も何度も。そのたびに後頭部は拘束し直されて、深い深いキスを食らわせられる。さっきまでは安らぎを感じていた筈の接触すらも、解放されない熱の燃料となって、ひどくわたしを苦しめた。
「っ、っ……ふ、っ、は、はふ、ぅぅ、ん……」
「っはー……」
もう何百年もそうしてたんじゃあないかってくらい同じことを繰り返したのちに、ようやく後頭部が解放された。奴の吐き出す切れ切れの息に、頬の辺りに張り付いていた髪が耳元へと落ちていった。
「――頂点に立つということは、とか、偉そうに言ってたくせに、お前、すっかり俺にやられっぱなしになってるわけなんだが……そこん所は、お前的にはどうなんだ、DIO」
余裕ぶってそんなことを言い出したこの男は、笑顔を浮かべているようでいて、その実緑色の両目には、今にも泣き出しちまうんじゃあないかってくらい切実な感傷が滲んでいた。
わたしはとりあえず、奴の頭へと手を伸ばした。両手を使って全体を撫でまわしてやれば、片方の手に付着していたのだろう先走りが黒い髪に絡みつき、蛍光灯の下で下品なきらめきを発している。
――そういう会話をしたことがあった。天国の話をしてやった時のことだ。
覚えてる。わたしはまだ、お前との記憶を忘れちゃいない。
だから大丈夫だ、わたしはまだ大丈夫、そんなに辛気臭い顔をされちゃあこちらが困るというものだ、■■■、
「――、ふ、ふふ、最高だ」
「……DIO？おいお前、」
「最っ高に、最低の気分だッ――承太郎！」
呆けたような顔をしている承太郎、の、鼻先へ向かって吐き捨てる。それでも奴は目を白黒させるばかりなので、奴を咥えたままの箇所に力を込めて、覚醒を促した。うっと低い声を漏らし、承太郎が呻く。とてもいい気分だった。ので、今度はわたしの方からキスをくれてやった。柔らかい口先同士が接触して、至近距離で見つめ合う。緑の瞳に涙の膜が張っていた。可愛らしいことだ。
「――あ、あ、あっ」
「中で、いいのか」
「中が、いいっ」
「っ、そうかよ、」
「ぁぁ、ぁああひぃッ、あゃっ、く、くるぅ、やっ、ひ、ぅあ、あ、あああああ……！！」
陰茎を拘束していた手は剥がれ、今度はそれこそ「手のひらを返したように」、激しくそこを扱きだした。
あっという間にやってきた絶頂がわたしの頭を馬鹿にする。承太郎の精液が腹の中に注がれる感覚を幼稚な言葉で実況しながら、半分しか開かなくなってしまった両方の目で、忌々しくも愛おしい男の顔をひたすらに見つめた。呆れかえった顔をして、けれど頬の赤らみを消すことの出来ない、なんともまあ格好のつかない男の顔を。
承太郎。この男は、承太郎という名前だ。
――なんとなく、記憶がなくなってもその名前は覚えているのでは、なんて気もしていたのだがなぁ。
承太郎の腹に乗り、だらだらと腰を振る。半ば惰性のようなものである。
気付けば２人して声を出すのが億劫になるくらい消耗していて、目蓋はそろそろ落ちそうだ。それでも離れようとは思わなかった。わたしの記憶が今日で終わるのだ、とか、これっきりで終わりなのだ、とか感傷的な理由はどれだけだってあるのだが、結局のところはようやく手に入れた男ともっとふしだらなことをしていたい、というだけなのかもしれない。
承太郎は、一層辛気臭くなった顔でじっとわたしを見上げている。呆れと愛しさが一緒くたになってやってきて、感情のままにわたしは笑った。いつの間にか、筋肉の引き攣りは気にならなくなっていた。一体どれだけ、この短い時間の中でわたしは、承太郎へと微笑みかけたというのだろう。なんともまあ、馬鹿馬鹿しく甘ったるい話である。
「分かるか承太郎。お前、この辺まで来てる」
下腹部の辺りを擦って見せると、承太郎は嫌そうに眉をしかめた。
「てめーとくれば、本当に、くだらねーことしか言わねぇ」
「興奮したろ？ちょとばかし硬くなったようだぞ、承太郎」
「うっせー馬鹿」
慎ましい生活を強いられた１年と少しで蓄えた精液は全部吐き出してしまったのに、腹の中が承太郎のぶちまけたもので満杯になっているのがおかしかった。
笑いながら、腰を振った。結合部がぬちぬちと音を立てている。孕むんじゃあないかってくらい注がれた精液が零れてゆく感覚が、どうしようもなく心地いい。
――もっとそこを突いてくれだとか、許してくれ、だとか、お前のペニスは最高だとか。
たくさんの戯言を喚き散らしたものである。正気であれば多少の羞恥心も感じようものではあるが、今ばかりはどうでもいい。承太郎とたくさん、たくさん繋がったのだ、という実感が嬉しくて、そんなちょっとした幸福な時間を続かせるために、飽きず咥えた陰茎を腹の中に擦り付けた。
音が鳴る。承太郎が呻く。わたしもちょっとだけ、喘いでみる。そうしている内に、とうとう承太郎の双眸から透明な涙が滴った。今にも泣き喚きだすのではないか、みたいな嫌な静寂を湛えたまま、承太郎はやっぱりじっと、わたしを見上げている。
「よくは、ないのか」
「……死ぬほど、いい。眺めも最高だ」
「なら泣くなよ、承太郎。そんなだから、お前は子供だというのだ」
「うるせーよ。涎垂らすだけがセックスじゃあねぇだろうが」
「ふふん、大人ぶったことを言っているうちは、子供なのだぞ。承太郎よ」
わたしは――実のところを言えば、こんなことは悲劇でもなんでもないと思っているし、そのうち何とかなるのではないか、という気もしている。１００年近くの時を経て、海の底から引き上げられた時のように。
なのに承太郎が、普段の素っ気なさが嘘のように悲劇ぶった顔ばかりをするものだから、ついついわたしも引きずられてしまうのだ。
きっとこれが最後だ。わたしの最後の記憶である。
セックスだって、これっきりだ。記憶を失くしたわたしに承太郎が手を出すことがあるのかもしれないが、それは決して「このDIO」ではない。承太郎とつまらない時間を過ごしたわたしは、この時間を最後にいなくなる――なんて、ちっともわたしらしくはない感傷に浸ってしまうくらいには。
「――お前はわたしを忘れるなよ、承太郎。忘れるな」
耳元で承太郎だけに囁いてやりながら、キスをした。多分、唇はみっともなく震えていた。それでもよかった。このDIOがこんなにも感傷に塗れた切実なキスを寄越してやった、という事実を忘れるな、忘れるな。わたしが忘れてしまってもお前さえ覚えていれば、わたしとお前の間であったことは嘘にはならない。繋がるはずのなかった縁が繋がって、挙句愛なんてクソみたいな感情が生まれてしまったなんて現実は決して、決して、嘘などには。
「だから、泣くなと。言っているだろうに」
拭った涙は、指から全身が爛れてしまいそうなほどに熱かった。
朝日を浴びては、太陽の元では生きてはゆけないわたしの不便を思い出せ。
夕日を眺めては、わたしの虹彩を思い出せ。
月を見上げてはわたしの髪の色を、躾のなっていない手付きでわたしの髪を撫で繰り回した無礼を猛省しろ。
わたしを忘れるな、承太郎。このDIOだ。お前などを愛おしいと思ってしまった、もうすぐ時間の止まってしまうこのわたしを。あしたのわたしがお前にどのような感情を抱くかなんてわからないし、お前がわたしにどう接するかなんて知らない、興味もない。けれどお前は決して忘れるな。「このDIO」のことを、死んでも絶対忘れるな。忘れるな。お前を諦めてなどやるものか。わたしはな、
「承太郎、」
わたしはお前の世界になってやろうと思っている。
お前を取りますくすべてになってやろうと、思っている。
■■■、
愛している。
「――このDIOにはその昔、心から愛した者がいた」
「起き抜けに何言ってやがるんだ、てめー」
「そういう夢を見たのだ。わたしの腹を抉るその男が憎くて憎くてたまらないはずなのに、そうされるのが酷く、なんというか、このまま死んでしまっても惜しくはないなんてことを思ってしまう程に嬉しくて、気持ちがよくて、けれどわたしの征服者たるその男は、本当はわたしに支配されたがっているものだから、わたしは――そうだ、その男の世界そのものになって、永遠にその男を縛り続けてやろうと思ったのだな」
「また、捻じくれ曲がった愛だことだ」
「血肉を食らってもまだ足りぬ。それがこのDIOの、愛だ」
「傍迷惑な野郎だぜ」
「このDIOにこうまで想われる者が、幸せでないはずがなかろうにぃ」
「なんつー自信だ」
「……お前がその男であったなら、なんというか、丁度良いのにな。手頃で」
「……はあ？……お前会いたいのか？そいつと」
「会いたいというか――なんというかだな、このDIOとしたことが、どうしたことか、愛しているの一言を伝えそびれてしまったのだ」
「相変わらず、爪の甘い」
「仕方なかろう。だって死ぬほど気持ちがよかったのだ。脳髄がぶっ飛んでしまう程に！」
「知らねーよ」
「ま……別に、言葉などには大した意味はないのだが。あいつは自分がこうまで想われていることを知っているべきだし、ここまでの慈悲をくれてやったわたしに腹を見せて感謝を示すべきだと――いいや――いいや、それは、違うな」
「DIO？」
「……そんなものはただの建前で、わたしはただ――伝えたかっただけなのだろうなぁ。理屈も理由も抜きにして、ただただお前が好きなのだと」
「……そいつってのは、ジョジョとかいう奴のことなのか？」
「ジョジョ？誰だそれは。聞き覚えがある気がしないでもないのだが――そうだなぁ。背がでかくて、態度もでかくて、クソ生意気で、まったく好ける要素のない男。わたしが愛した男とは、そういう奴だ……？」
「趣味悪ぃなぁ、お前。自分でも首捻ってんじゃあねぇか」
「……少々、愕然としている。わたしはそいつの何がよかったのだろうな」
「ま、もう終わっちまった話だろう。今日はどうする。適当に何冊か見繕ってきたんだが」
「おお、気が利くではないか！」
「……なんで俺に寄りかかりやがるんだよ。壁なり枕なりあるだろうが」
「お前が壁と枕になればいい。それで解決だ」
「そうかよ」
「ところで、お前は？」
「承太郎だ」
「承太郎。ふぅむ、なんと態度も図体もでかい男」
「てめーにだけは言われたくねぇぞこら」
「案外、本当にお前だったりするのかもな」
「勘弁してくれ」
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承太郎の両手で割り開かれた両足が、耐え切れぬと空気を蹴りつけている。渾身の力で握りしめたシーツには穴が開いたようだった。だめだ、他人事だ。なんというかもう、承太郎を咥え込んだ箇所でしかものを考えられなくなってしまっている。とにかく、もっと欲しかった。こんな、一度きりの刺激では、全く足りやしなかった。
「～～あっ、ひぃっ！？ぁっ、あっ、あああぁあ……！」
なのに、抜けてゆく。承太郎の質量がそっけなくわたしの奥から去ってゆき、亀頭を淵の辺りに引っ掛けるように停止した。
「ねっ、ねっちこい……！あまりにもッ」
「よさそうな顔して何言ってやがるんだ」
「よくなどないッ、っ、ぁっ、やめ、やめろこのばか！そ、それは、嫌だッ！いや、なのだッ！」
「喜んでるようにしか見えねーぞ、馬鹿」
カリ首の辺りで入口を愛撫される感覚は、それだけであれば悪くはない。けれどわたしは既に、とんでもなく深い部分を抉られる快感を知ってしまっている。承太郎の陰茎がどれだけ太くて硬くて大きいのかということも。なので足りない。まったくもって足りやしない。中途半端な快感を与えられればられるだけ、それ以上のものへの期待に腰から下が揺れた。
「な、にを、承太郎、おまえぇっ、意地に、なってぇ、あっ、あっ、うぅっ」
「さっさと終わらせちまうのも、もったいねぇ話、だろう」
「だからといって、こんなぁっ、あ、っくッ、くそっ、なんと、せせこましいおとこっ、あっ、あああぁああッ！！？」
２度めのインサートにも、前触れはなかった。さっきと同じだ。わたしがちょっとばかり気を抜いた隙を狙って、この男は、この男は――
「あ、あ、や、いや、ぁ」
脳内を蝕み始めていた陶酔が、再び波のように引いてゆく。またしても承太郎は、たった１度きり奥を突いただけで、さっさと入口へと戻っていってしまったのだ。抜けかかった亀頭に入口を割り広げられて酷く苦しい。そんな箇所はどう考えたって、承太郎には丸見えだ。
「み、みるな、あほっ、承太郎の、クソ野郎ッ」
「あんまきたねー言葉遣うなよ。萎えるだろ」
「こんなにでかくしておいて、何を言うッ！しらじらしっ、ぁあっ、ぅ、だ、だからぁ、それ、ぇ、いやだと、わ、わたし、なんどもぉッ、ぁ、あぅ……」
浅い場所をひっきりなしに承太郎の陰茎でこすられる。同じだけの勢いで奥を突いて欲しいのに、承太郎はやたらに雄くさい顔で笑いながら、見当違いに頭を撫で出す始末である。武骨な指が、馬鹿みたいに優しくわたしの髪を掻き上げる。露わになった生え際を撫でられる感覚にため息が漏れた。大変に、心地の良い接触だった。
しかしわたしが今一番に欲しいのは生温い安らぎなどではなくて、もっと激しい、６０兆の細胞をバラバラにしてしまう勢いの快感なのだ。
頭を振って、承太郎の手を追い落とす。でかい掌が剥がれた頭部が妙に寒々しかったが、そんなものに未練を残してはいつまでたっても絶頂にたどり着けやしない。承太郎が、お、と虚を突かれたような顔をしている隙に手を掴み、焦らされているうちにすっかり勃起してしまっていた自らの陰茎へと導いた。
「わたしのペニスを扱いて、中を、抉れ！お前はそれだけしていればいいッ！もったいないもくそも、まだ夜は始まったばかりなのだぞ、承太郎っ！」
最後に「今日だけはお前のやりたいことの全部に付き合ってやるつもりなのだ」と付け加えれば、承太郎はまぬけと形容することすら憚られる腑抜けた面になる。くそ、そんな顔をするな。初めからそう思ってたわけじゃあないが、触れ合っているうちにそういう気分になってしまったのだから仕方がないだろう、阿呆、承太郎の、あほ。
「――っ」
「顔を赤らめている暇があったらさっさと動け愚図！」
「っ、てめー、っ、くそ、お前、あれだからな、あとから文句たれても俺ぁ聞いてやらねーからな、お前、十代の馬力舐めんじゃあねぇぞ！」
「やれるものなら、やってみろ！わたしを、わ、わたしを――もう一度、殺してみせるのだ、承太郎っ！！」
「～～っ、DIO、おまえ、お前って野郎は、本当に――！！！」
「ひ、ああっ、あ、あぁああ！！！」
粘着質な音を立てながら、承太郎が信じられないくらい奥の方まで入ってくる。さっきよりも深い、さっきよりも、固くて大きい。思わず涎が漏れた。拭う余裕なんかもなくて、きっとわたしはとんでもなくだらしない顔を承太郎の前に晒してしまっている。しかし、それがなんだと言うのだ。わたしはさっきからずっと、浅ましく蠢いていたのだろう結合部を見られていたのだぞ。だから、今更だ。今更承太郎の前で、取り繕わねばならぬものなどなにもない。
「はぁっ、あ、あっ、や、じょっ、たろぉっ、あああっ、だ、だめだ、そんなっ、きゅう、にぃ……！あああっ、ぁ、は、ひっ」
「結局、てめーはっ、入れても抜いてもうるせー文句を、つけやがるっ」
「極端なのだッ、きさまという、やつはッ！あっ、ああッ、あ！？ひ、ぃあっ、あ、そ、そこだめだっ、じょぉたろっ、だ、だめっ、も、もっとこぉ、だ、だんかいを、ふんでからぁっ、あ、あぁっ」
承太郎の律動に合わせてベッドがガタガタと揺れている。振り落されてしまわぬように、わたしは片腕を承太郎の首に巻きつけた。もう片方で、承太郎の手を使って自慰をした。だって承太郎とくれば、手淫も命じられていることをすっかり忘れてしまっているようなのだ。それだけ中を突くことに必死になっている。奴の顎先から弾き出された汗が、わたしのどこかに付着した。
「んな喋ってっと、その内お前、舌噛むぞ……！」
「お、おまえが、ふさげ！」
「ああ？塞いでくださいお願いしますだろうが、DIO！？」
「ひぃいっ、あ、ああはっ、あっ、あっ」
うるさい。うるさい。耳を澄まさなければ分からない程度の機械の作動音しかなかったこの部屋が、すっかり街の雑踏のごとく猥雑な喧騒に満ちている。ベッドの軋む音が聞き苦しい、下品な水音がはしたない、この口から漏れるばかりの阿呆のような嬌声が煩わしい、承太郎の上擦った声が、荒い息が、とんでもない大音量となってわたしの鼓膜に叩きつけられるものだから、耳が痛くて、頭も、頭の中も――、
「じょう、たろうッ！」
「――！！」
うっとおしい承太郎の声と息を封じ込めてしまう為に――という、建前で、わたしは太い首に巻きつけた腕を引き、奴の頭を引き寄せた。
厚ぼったい唇に口付ける。確か、これが初めてだ。承太郎とキスなんかをしたことはない。それどころか、愛を囁き合ったことすらも。すべての過程を吹き飛ばしてせっせとセックスに勤しんでいることが妙に滑稽で、おかしかった。思わず笑みが漏れた。頬の辺りの筋肉が痛い。
「……ニヤニヤしてんじゃあねーよ、こら」
「ん、ふぅ、ん、ん……」
装いきれない仏頂面でなにやらを呟いた承太郎は、片手でわたしの後頭部を拘束して、喉の奥までを犯し尽くすようなキスを寄越した。遠慮容赦なしに突っ込まれた濡れた舌、そして首が仰け反って息の詰まる感覚が、このまま死んじまうんじゃあないかってくらい、気持ちがいい。
しかし、そんな微睡むような快楽はいつまでも続かない。予告もなしに、再び、承太郎の下半身が暴れ出したのだ。
「っ、んっ、むぅ、ぅ、ん、ん……～～！！？」
されるがままにわたしの陰茎を扱く道具となっていた大きな掌が、突如自我に目覚めたかのように陰茎の根元を拘束する。溢れかけていた熱がせき止められて、頭がおかしくなってしまいそうだった。
かぶりを振った。何度も何度も。そのたびに後頭部は拘束し直されて、深い深いキスを食らわせられる。さっきまでは安らぎを感じていた筈の接触すらも、解放されない熱の燃料となって、ひどくわたしを苦しめた。
「っ、っ……ふ、っ、は、はふ、ぅぅ、ん……」
「っはー……」
もう何百年もそうしてたんじゃあないかってくらい同じことを繰り返したのちに、ようやく後頭部が解放された。奴の吐き出す切れ切れの息に、頬の辺りに張り付いていた髪が耳元へと落ちていった。
「――頂点に立つということは、とか、偉そうに言ってたくせに、お前、すっかり俺にやられっぱなしになってるわけなんだが……そこん所は、お前的にはどうなんだ、DIO」
余裕ぶってそんなことを言い出したこの男は、笑顔を浮かべているようでいて、その実緑色の両目には、今にも泣き出しちまうんじゃあないかってくらい切実な感傷が滲んでいた。
わたしはとりあえず、奴の頭へと手を伸ばした。両手を使って全体を撫でまわしてやれば、片方の手に付着していたのだろう先走りが黒い髪に絡みつき、蛍光灯の下で下品なきらめきを発している。
――そういう会話をしたことがあった。天国の話をしてやった時のことだ。
覚えてる。わたしはまだ、お前との記憶を忘れちゃいない。
だから大丈夫だ、わたしはまだ大丈夫、そんなに辛気臭い顔をされちゃあこちらが困るというものだ、■■■、
「――、ふ、ふふ、最高だ」
「……DIO？おいお前、」
「最っ高に、最低の気分だッ――承太郎！」
呆けたような顔をしている承太郎、の、鼻先へ向かって吐き捨てる。それでも奴は目を白黒させるばかりなので、奴を咥えたままの箇所に力を込めて、覚醒を促した。うっと低い声を漏らし、承太郎が呻く。とてもいい気分だった。ので、今度はわたしの方からキスをくれてやった。柔らかい口先同士が接触して、至近距離で見つめ合う。緑の瞳に涙の膜が張っていた。可愛らしいことだ。
「――あ、あ、あっ」
「中で、いいのか」
「中が、いいっ」
「っ、そうかよ、」
「ぁぁ、ぁああひぃッ、あゃっ、く、くるぅ、やっ、ひ、ぅあ、あ、あああああ……！！」
陰茎を拘束していた手は剥がれ、今度はそれこそ「手のひらを返したように」、激しくそこを扱きだした。
あっという間にやってきた絶頂がわたしの頭を馬鹿にする。承太郎の精液が腹の中に注がれる感覚を幼稚な言葉で実況しながら、半分しか開かなくなってしまった両方の目で、忌々しくも愛おしい男の顔をひたすらに見つめた。呆れかえった顔をして、けれど頬の赤らみを消すことの出来ない、なんともまあ格好のつかない男の顔を。
承太郎。この男は、承太郎という名前だ。
――なんとなく、記憶がなくなってもその名前は覚えているのでは、なんて気もしていたのだがなぁ。
承太郎の腹に乗り、だらだらと腰を振る。半ば惰性のようなものである。
気付けば２人して声を出すのが億劫になるくらい消耗していて、目蓋はそろそろ落ちそうだ。それでも離れようとは思わなかった。わたしの記憶が今日で終わるのだ、とか、これっきりで終わりなのだ、とか感傷的な理由はどれだけだってあるのだが、結局のところはようやく手に入れた男ともっとふしだらなことをしていたい、というだけなのかもしれない。
承太郎は、一層辛気臭くなった顔でじっとわたしを見上げている。呆れと愛しさが一緒くたになってやってきて、感情のままにわたしは笑った。いつの間にか、筋肉の引き攣りは気にならなくなっていた。一体どれだけ、この短い時間の中でわたしは、承太郎へと微笑みかけたというのだろう。なんともまあ、馬鹿馬鹿しく甘ったるい話である。
「分かるか承太郎。お前、この辺まで来てる」
下腹部の辺りを擦って見せると、承太郎は嫌そうに眉をしかめた。
「てめーとくれば、本当に、くだらねーことしか言わねぇ」
「興奮したろ？ちょとばかし硬くなったようだぞ、承太郎」
「うっせー馬鹿」
慎ましい生活を強いられた１年と少しで蓄えた精液は全部吐き出してしまったのに、腹の中が承太郎のぶちまけたもので満杯になっているのがおかしかった。
笑いながら、腰を振った。結合部がぬちぬちと音を立てている。孕むんじゃあないかってくらい注がれた精液が零れてゆく感覚が、どうしようもなく心地いい。
――もっとそこを突いてくれだとか、許してくれ、だとか、お前のペニスは最高だとか。
たくさんの戯言を喚き散らしたものである。正気であれば多少の羞恥心も感じようものではあるが、今ばかりはどうでもいい。承太郎とたくさん、たくさん繋がったのだ、という実感が嬉しくて、そんなちょっとした幸福な時間を続かせるために、飽きず咥えた陰茎を腹の中に擦り付けた。
音が鳴る。承太郎が呻く。わたしもちょっとだけ、喘いでみる。そうしている内に、とうとう承太郎の双眸から透明な涙が滴った。今にも泣き喚きだすのではないか、みたいな嫌な静寂を湛えたまま、承太郎はやっぱりじっと、わたしを見上げている。
「よくは、ないのか」
「……死ぬほど、いい。眺めも最高だ」
「なら泣くなよ、承太郎。そんなだから、お前は子供だというのだ」
「うるせーよ。涎垂らすだけがセックスじゃあねぇだろうが」
「ふふん、大人ぶったことを言っているうちは、子供なのだぞ。承太郎よ」
わたしは――実のところを言えば、こんなことは悲劇でもなんでもないと思っているし、そのうち何とかなるのではないか、という気もしている。１００年近くの時を経て、海の底から引き上げられた時のように。
なのに承太郎が、普段の素っ気なさが嘘のように悲劇ぶった顔ばかりをするものだから、ついついわたしも引きずられてしまうのだ。
きっとこれが最後だ。わたしの最後の記憶である。
セックスだって、これっきりだ。記憶を失くしたわたしに承太郎が手を出すことがあるのかもしれないが、それは決して「このDIO」ではない。承太郎とつまらない時間を過ごしたわたしは、この時間を最後にいなくなる――なんて、ちっともわたしらしくはない感傷に浸ってしまうくらいには。
「――お前はわたしを忘れるなよ、承太郎。忘れるな」
耳元で承太郎だけに囁いてやりながら、キスをした。多分、唇はみっともなく震えていた。それでもよかった。このDIOがこんなにも感傷に塗れた切実なキスを寄越してやった、という事実を忘れるな、忘れるな。わたしが忘れてしまってもお前さえ覚えていれば、わたしとお前の間であったことは嘘にはならない。繋がるはずのなかった縁が繋がって、挙句愛なんてクソみたいな感情が生まれてしまったなんて現実は決して、決して、嘘などには。
「だから、泣くなと。言っているだろうに」
拭った涙は、指から全身が爛れてしまいそうなほどに熱かった。
朝日を浴びては、太陽の元では生きてはゆけないわたしの不便を思い出せ。
夕日を眺めては、わたしの虹彩を思い出せ。
月を見上げてはわたしの髪の色を、躾のなっていない手付きでわたしの髪を撫で繰り回した無礼を猛省しろ。
わたしを忘れるな、承太郎。このDIOだ。お前などを愛おしいと思ってしまった、もうすぐ時間の止まってしまうこのわたしを。あしたのわたしがお前にどのような感情を抱くかなんてわからないし、お前がわたしにどう接するかなんて知らない、興味もない。けれどお前は決して忘れるな。「このDIO」のことを、死んでも絶対忘れるな。忘れるな。お前を諦めてなどやるものか。わたしはな、
「承太郎、」
わたしはお前の世界になってやろうと思っている。
お前を取りますくすべてになってやろうと、思っている。
■■■、
愛している。
「――このDIOにはその昔、心から愛した者がいた」
「起き抜けに何言ってやがるんだ、てめー」
「そういう夢を見たのだ。わたしの腹を抉るその男が憎くて憎くてたまらないはずなのに、そうされるのが酷く、なんというか、このまま死んでしまっても惜しくはないなんてことを思ってしまう程に嬉しくて、気持ちがよくて、けれどわたしの征服者たるその男は、本当はわたしに支配されたがっているものだから、わたしは――そうだ、その男の世界そのものになって、永遠にその男を縛り続けてやろうと思ったのだな」
「また、捻じくれ曲がった愛だことだ」
「血肉を食らってもまだ足りぬ。それがこのDIOの、愛だ」
「傍迷惑な野郎だぜ」
「このDIOにこうまで想われる者が、幸せでないはずがなかろうにぃ」
「なんつー自信だ」
「……お前がその男であったなら、なんというか、丁度良いのにな。手頃で」
「……はあ？……お前会いたいのか？そいつと」
「会いたいというか――なんというかだな、このDIOとしたことが、どうしたことか、愛しているの一言を伝えそびれてしまったのだ」
「相変わらず、爪の甘い」
「仕方なかろう。だって死ぬほど気持ちがよかったのだ。脳髄がぶっ飛んでしまう程に！」
「知らねーよ」
「ま……別に、言葉などには大した意味はないのだが。あいつは自分がこうまで想われていることを知っているべきだし、ここまでの慈悲をくれてやったわたしに腹を見せて感謝を示すべきだと――いいや――いいや、それは、違うな」
「DIO？」
「……そんなものはただの建前で、わたしはただ――伝えたかっただけなのだろうなぁ。理屈も理由も抜きにして、ただただお前が好きなのだと」
「……そいつってのは、ジョジョとかいう奴のことなのか？」
「ジョジョ？誰だそれは。聞き覚えがある気がしないでもないのだが――そうだなぁ。背がでかくて、態度もでかくて、クソ生意気で、まったく好ける要素のない男。わたしが愛した男とは、そういう奴だ……？」
「趣味悪ぃなぁ、お前。自分でも首捻ってんじゃあねぇか」
「……少々、愕然としている。わたしはそいつの何がよかったのだろうな」
「ま、もう終わっちまった話だろう。今日はどうする。適当に何冊か見繕ってきたんだが」
「おお、気が利くではないか！」
「……なんで俺に寄りかかりやがるんだよ。壁なり枕なりあるだろうが」
「お前が壁と枕になればいい。それで解決だ」
「そうかよ」
「ところで、お前は？」
「承太郎だ」
「承太郎。ふぅむ、なんと態度も図体もでかい男」
「てめーにだけは言われたくねぇぞこら」
「案外、本当にお前だったりするのかもな」
「勘弁してくれ」
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