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「……ん……んんー……」
頭から爪先までを包む暖かな布団の中で、DIOはぱちりと目を覚ます。そして寝ぼけ眼のまま無意識に、両腕の中に抱え込んだごわごわとした布地――眠る前は肩から羽織っていた筈のコートに鼻先を埋め、すうと息を吸ったのだった。
「……、」
鼻腔をくすぐる懐かしい香りが、DIOに穏やかな安らぎを与える。開いたばかりの瞼は再び微睡むように閉ざされて、目尻から寝起きの涙が滴った。今自分が抱えているコートの持ち主も、染みついた香りの正体も、DIOはまったく覚えていない。しかしそれらが強烈に愛しいということだけは、知っている。ぼんやりとした幸福感に酔いしれながら、DIOの意識は再び眠りの世界へ落ちようとしていた。
しかし、不意に、地面が揺れた。地面――ベッド、スプリング。何者かが、DIOの寝転がるベッドに体重をかけたのである。
「……ん、」
途端に湧き出た、正体も分からない焦燥感にせっつかれるように、DIOの意識は覚醒した。気が急くままに羽毛布団を跳ね除ければ、闇に慣れた両目が蛍光灯の光に照らされる。目が眩み、眉間には皺が寄る。やたらに眩い視界の中に、『それ』はいた。ベッドサイドに腰かけて、手元の本に目を落としている男。DIOに向けられた薄情な背中。
覚えがある――わたしはあれが『愛おしい』のだということを知っている。
DIOは倒れ込むように、その広い背に抱きついた。
「うおっ」
「……」
「おい、苦しいぞ」
「……」
「おい、DIO」
「……DIO」
「ああ――今日はまた、よく寝てたもんだな、DIO」
「……思い出した。それは確か、わたしの名前だ」
「ああ、そうだ」
男の腹部へ回ったDIOの腕に、きゅっと力が籠ってゆく。男は苦笑を零しながら本を放りやり、首だけで後ろを向いた。
「嫌な夢でも見たのか?」
「いいや、そのようなことは」
「だったらどうした。甘えたくでもなったのか」
「……そうかもしれない」
「素直だな、珍しく」
「普段のわたしは、こうではないのか」
「へそ曲がりの強情張りだ」
「ああ、よかった。こんな気分はただの衝動で、本来のわたしは決して甘えたな腑抜けではないのだな。安心した」
「俺は腑抜けでも構わねぇが」
「わたしが構うのだ、承太郎め――ん?」
頓狂な声と共に、DIOの腕の力が緩む。その隙に男は、承太郎は体を反転させて、腰かけていたベッドに乗り上げた。そして自らの膝の上に乗せるように、DIOを真正面から抱き締める。されるがままになっているDIOは、きょとんとした無防備な顔で承太郎を見下ろしている。
「承太郎」
「俺だな」
「お前が、承太郎」
「ああ」
「ふ――ふふふ、どうだどうだ承太郎、今日は自力で思い出すことができたようだぞ、このDIOはっ!」
「ああ、すげぇすげぇ。よくできました、だな」
「もっと褒めても構わんぞ」
「調子に乗るな」
ぶっきらぼうに吐き捨てながら、承太郎腕の中のDIOへとキスをする。片手で後頭部を、もう片方で頬を押さえ込み、深い深いキスでDIOを愛でるのだ。DIOの白い掌は、きゅっと承太郎の短い髪を握っている。
「ん……ぷ、はぁ」
「……目ぇ覚めたか?」
「……しつこい、承太郎」
「好きなくせに」
「誰が、っ、~~……」
噛み付くような、キスだった。まるで食われているようだ、とDIOは思う。遅れてやってきたのは、承太郎の横暴への怒りである。しかし罵倒文句を飛ばしてやろうにも、口先はぴっちりと塞がってしまっていて、なにより酷く気持ちが良い。脳髄がとろけるような快楽に、DIOの精神は蝕まれてゆく一方だ。その内ぺたりと承太郎の膝の上に座り込めば、捕食そのものであるキスは一旦の終了を迎え、承太郎の大きな掌が労わるようにDIOの頬を撫でたのだった。
「じょう、たろぉ……きさま、きさまという奴はぁ……」
吐き出す息はどこまでも熱く、零れる声は甘ったるい。表情もとろとろととろけてしまっていて、完全にできあがってしまっている状態である。さすがにやりすぎたかと、承太郎は苦笑した。
「つーかお前、なんだよその格好。パンツくらいちゃんと履いとけっつっただろ」
「む……もしやわたしには、下着を付ける習慣というものがないのだろうか……?」
「……半々だな」
「そうか……半々か……」
くったりと萎れるように、DIOは額を承太郎の肩口に押し当てた。すかさず承太郎の両腕は、DIOの背を抱き締めに掛かってくる。火照った体が触れた箇所から溶けあってゆくような、甘い幻想に酔いながら、DIOはゆっくりと瞼を閉じた。
「寝足りねぇのか」
「……欲情をしているような気がする」
「……するか?」
「する」
即答である。少々顔を傾けて、DIOは承太郎の首筋に噛み付いた。ぴくり、と震える巨体への愛しさに、口の端はにんまりと吊り上ってゆく。羽織ったシャツの隙間から潜入した武骨な指が、慣れた手付きで肌の上を滑ってゆく感触などは、尚更のものだった。
「ふ、はぁ、ぁ、は、ふふ、ふ」
「機嫌よさそうだな、お前」
「うむ……そうだな、ぁ、あ」
承太郎が触れる個所からじんじんと競り上がる快感に、DIOは吐息と共に嬌声を上げる。姿勢を整えようとちょっとばかり頭を浮かしてみれば、その隙を狙ったかのように承太郎の手によって上半身を引き上げられ、露わになった胸の尖りを柔らかな唇で啄まれる。いよいよ、DIOの嬌声は甘ったるさを増してゆく。
「ぁあ、は……じょうたろう、反対も……」
「自分で弄ってな。今はちょいと忙しい」
「へ……?っ、ぁ、あ、あぅ……」
突如後孔に突きいれられた質量に、DIOの体からどっと力が抜けてゆく。内壁は受け入れた質量、承太郎の指を歓迎するようにひくついていて、これといった抵抗はない。それどころかきゅうきゅうとした締め付けは、それ以上の質量の挿入を望んでいるようですらある。じれったさに腰を揺らめかせながら、DIOは外気に晒された自らの乳首を摘まみ上げた。
「はっ、は、ぅあ、ぁ、は……」
「……よさそうだな」
「ん……いいぞ、とても……承太郎のペニスをぶちこまれたら、もっと……よくなるような、気がする……」
「……もうちょい待ってな」
「あっ!ぁ、ふ、ふえたぁ……ん……その調子だ、じょうたろうー……」
2本、3本と増やされた承太郎の指が、DIOの中でばらばらと蠢いている。前立腺を掠める度にDIOは一際上擦った声を上げ、期待を叩きつけるように爪を立てられた乳首はぷっくりと膨れ上がってゆく。もう片方に舌を這わせながら承太郎はDIOを見上げ、熱にとろけた美貌に満足げな笑みを零した。雄の興奮と、DIOへの愛しさがないまぜになった表情である。駆け抜ける歓喜と期待に、DIOの背筋はぶるりと震えた。
「じょ、承太郎……もう、我慢が、できんのだがっ」
「耐え性ねぇんだな、相変わらず」
「……昔は、お前の方がどうしようもなく耐え性のない、ガキだった!なにを、一人前の男ぶった顔を!お前が青臭いガキだったことをちゃんと知っているのだからな、このDIO、っ、ひっ」
性急に指が引き抜かれ、DIOの顎が仰け反った。視界の外では承太郎が、感極まる感情のままに、今にも泣き出しそうなほどの穏やかな笑みを浮かべている。時たまDIOの記憶が――例え切片であっても蘇る瞬間というものは、いつだって承太郎に言葉にはできない感慨と、蜂蜜の海に溺れるような愛しさを与えるのだ。
「DIO、愛してる」
「……ん」
赤い顔で、DIOはこくりと頷いた。そして、口の端にちゅっとキスを仕掛けてくる。応じてやりながら、承太郎は片腕でDIOの背をしっかしと抱きしめた。DIOの両腕は承太郎の首に巻きついている。
「承太郎」
「どうした」
「わたしは、大丈夫なのだそうだ」
「何の話だ」
「お前こそがわたしの世界で、わたしこそがお前の世界そのものであるということさえ覚えていれば――脳の記憶の保存されている部分ではなくて、ええと、そうだ、心臓、この心臓だな。ここに刻み付けられている限り、わたしは大丈夫、わたしの幸福は、続いてゆくものであるらしい」
「なんのこっちゃ分からねぇぜ、おい」
「どれだけ記憶が曖昧になろうとも、お前といると脈拍が激しくなる。お前の名前を忘れたときも、顔を忘れたときも、それは変わらない。本当にうるさくなるのだぞ。わたしはきっと、心臓でお前のことを覚えている。ならば、生きている間はずっと一緒だ、承太郎。この心臓が動いている限り、わたしはずっと、お前の記憶と共にあるのだろう」
「……いやほんと、どうしたお前。なんか不安なことでもあったのか?」
「さあな、忘れた。おい、お前こそどうしたんだ承太郎?ふふふ、らしくもなく真っ赤になっているようだが」
「真顔で聞けるか、馬鹿」
承太郎は、抱きしめる。胸中のDIOを、強く強く抱きしめる。記憶の持たないDIOとの生活を、重荷と思ったことはない。自分で選んだ生き方であるし、いつだってDIOが傍にいるという事実は何物にも代えがたい幸福である。
それでも――報われたのだ、と思ったのだ。
鼻先を埋めたDIOの首筋に、承太郎は口の先でそっと触れた。くすぐったげに、ブロンドの先っぽが揺れている。鼓膜を打つのは仕方のない男だな、なんて台詞と共に零された、笑み交じりの吐息である。
「承太郎、感慨に浸るのもいいが、はやく」
笑みながら、DIOは承太郎のつむじにキスをする。
「お前が欲しい、承太郎」
「ああ――DIO」
顔を上げて、DIOと承太郎は見つめ合う。どちらともなく笑い合えば、甘い痺れを伴った幸福感が2人の心臓を暖めるのだ。視線を合わせたままに、承太郎は軽く扱いた性器の先端を指で広げた後孔に押し付けた。DIOが喉の奥で息を詰める。薄手のシャツに包まれた白い背を撫でながら、承太郎はゆっくりとDIOの体を割り開いた。
「あっ、ぁあ……ぁ、はぁ……」
逆光に翳るDIOの美貌が、とろける砂糖のように歪んでゆく。赤い瞳は気恥ずかしげに逸れてゆく。すかさず承太郎はキスを仕掛け、DIOの視界を独占しに掛かってくる。逃れようのない距離である。DIOは観念したように、至近距離の緑の目を見つめ、白磁の頬を深い深い桃色に染めた。
「ん、はふ、は、ぁ、むぅ、んっ、ん……」
口先を触れ合わせたまま、緩やかな抽挿が繰り返される。どこもかしこもから湧き出る穏やかな快感に、DIOはとうとう目を閉じた。閉ざされた視覚の代わりに鋭敏になった感覚器官が承太郎の体温や、香り、浅くなった呼吸の愛しさをこれでもかと拾い上げ、DIOをより深い幸福の海へと突き落としに掛かってくる。薄れゆく意識の中で、溺れてしまいそうだ、とDIOは思う。しかしDIOは、承太郎にしがみ付いてさえいれば溺れてしまっても何の問題もないことを知っている。なので強く、抱きしめた。両腕の中に閉じ込めた承太郎の肩口を、強く強く抱きしめたのだ。傍から見れば、縋りついているようでもある。
「DIO、……DIO、」
「は、ぁ、ああっ、あ、じょ、じょうたろっ」
「……すげぇ、いい」
「わ、わたしもぉ……きもちい、あ、ああっ、す、すごいっ、ぁあ……!!」
とうとう唇は離れ、承太郎も肩口に回る白い腕に応じるように、自らの両腕でDIOの背を抱き締める。抽挿は激しさを増し、粘着質な音と肉がぶつかり合う音が部屋中に響き渡る。DIOの嬌声も、もうこれ以上はない程にとろけてしまっている。
「ああ、ぁ、あ、はげしっ、ふ、ぁ、あっ」
「ん……ちょいと、休むか……?」
「だ、だめだっ、やめたらだめっ、もっと、もっと、承太郎っ、や、やめたら、ころすっ!」
「できねーくせに」
「あああっ!!」
一際奥を突き上げると、とうとう白い瞼の内から涙が溢れた。赤くなった頬を伝い、下へ下へと流れてゆく。透明な雫を舐め上げながら、承太郎は抱えたDIOをシーツへと押さえつけるように、体を倒した。そして、一心にDIOの体内を突き上げる。跳ねるDIOの両脚が、どんどんと承太郎を蹴りつける。力の加減ができていないようで、それなりに痛い。痛ければ痛い程に愛おしいのだ、と承太郎は思う。なにを頭の沸いたことを、と苦笑を、やたらに緩んだ苦笑を零しながら。
「じょーたろっ、じょうたろうっ、じょう、たろうっ!!」
「ああ……俺は、ここに居る、ちゃんと、ここに、いる」
「す、すき、じょうたろっ、すきぃっ、あ、あはっ、ぁ、ぁ、や、ああっ」
「DIO……!!」
体積の膨れ上がった承太郎の性器が、DIOの中を散々に荒らしてゆく。叩きつけられる熱の熱さに、情念のあまりにもの深さに、DIOは限りない幸福感と愛おしさを催さずにはいられなかった。

「じょう、たろー」

嬌声を堪え、名前を呼ぶ。何度も何度も瞬いて、その目から視界を滲ませる涙を追い出して、承太郎をだけをじっと見つめる。目が合った拍子に、DIOはふっと笑みを零す。どこまでも穏やかで、暖かな幸福に包まれた美しい笑顔だった。承太郎の精悍な面差しが歪む。あれが泣き出す寸前の顔だと、DIOは知っている。次の瞬間には、承太郎は涙を誤魔化すべく深いキスを仕掛けてくるのだということも。
舌先から溶け合うようなキスの中で、この幸福を少しでも長く覚えておきたいものだなと、DIOは思った。忘れてしまうことが、心の底から惜しかった。
それでも、

「DIO」

DIOという名を飽きず呼んでくれる承太郎が傍にいる限り、大丈夫だ、自分は大丈夫なのだ、いつだって幸せに腑抜けた馬鹿のままでいられるのだ――ということも、知っている。高鳴る心臓で覚えている。
とくとくと続く脈拍の心地よさに、無性に泣きたくなりながら、DIOはゆっくりと目を閉じた。








承太郎の顔見る度どきどきするDIO様とか可愛いなと思ったわけですよ!


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