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2

それから3日後の夜である。帰宅した承太郎を出迎えたのは、重く湿った夏の空気が立ち込める、人気の失せたリビングだった。鞄をソファーの上に投げ置き、額に滲む汗を拭う。そして机の下に転がるリモコンを拾い上げ、冷房の電源を入れた。ひやりと爽快な冷風が吹き付けるも、リビングが快適な室温に落ち着くのはもう少し先のことのようである。背筋を汗が流れていった。
承太郎は首を捻り耳を澄ます。DIOの姿は見当たらない。風呂を使っているような音も聞こえなかった。一通り室内を見渡したのち、最後に承太郎はどこかぎこちなく、DIOの寝室へ目をやった。本当は、一番最初に様子を窺ったのはそこだったのだ。しかし瞬間的に、目を反らした。承太郎を誘うように半開きになったその扉は、3日前の記憶をとてもとても生々しく、承太郎の頭から引き摺り出しに掛かってくる。耐えられなかった。恥じて、そう思うのではない。衝動的に同じ行為に及んでしまうのが、怖かったのだ。
改めて目をやったその扉は、やはり半開きである。DIOは、中にいるのだろうか。無意識に一歩先へと踏み出しかけ、承太郎は慌ててソファーに座り込んだ。ふう、と浅い息を吐きながら、天井を仰ぎ見る。帽子は頭から滑り落ち、露わになった額を25℃の冷風が撫でていった。

『遅い!何故さっさと帰ってこないのだ、どこぞで寄り道をしていたのではあるまいな。この狭い部屋では、腹を減らしたDIOが待っているというのに!』
目を閉じれば、浮かび上がるのはDIOとの記憶ばかりである。

『承太郎、海に行きたい、連れて行け。なに?帰ったばかりだ?知るか。わたしは今、海へと行きたいと言っているのだ、承太郎よ』
尊大で、我儘な吸血鬼である。ただ、今ほど打ち解ける前。喧嘩もなければ会話もなかったような頃よりも、どれだけ適当な言葉であろうが、もしかすると出迎えの言葉でもなんでもないのかもしれないが、それでも『おかえり』の一言に代わる言葉を投げかけられるのは嬉しいことであるものだなと、密かに承太郎は思うのだ。

『なんだ貴様、濡れ鼠ではないか、みっともない。夕立にでもやられたのか?そうか、外は雨が降っているのだな』
しかし――この3日ばかりの間は、DIOの出迎えを受けた記憶はない。思い返す記憶はすべて3日以前のものばかりだ。

3日。DIOを肴に自慰に及んでから、それだけの時が経っている。
あれからというもの、承太郎は露骨にDIOを避けた。傍から見れば普段の無愛想な承太郎となんら変わりのない姿だったのかもしれないが、毎日当たり前に交わしていたおはよう、おやすみ、行ってくる、ただいま、それらの挨拶をしていない、それどころかむしろ出発と帰宅の時間をずらし、意図的にDIOと過ごす時間を短くしている。そう長い付き合いではないとはいえ、それなりの時を2人で暮らしてきたDIOは敏感に、承太郎の変調を感じ取っていたのだろう。元からそう多くはなかったDIOの口数も徐々に減り、自室に籠る時間が長くなった。思えば最後に顔を合わせたのは、丸1日前のことになるのかもしれない。
承太郎は、仰向くかんばせを自らの大きな掌で覆う。そうして吐き出す溜息は、後悔由来のものである。
なにも、ああまで露骨に避けるつもりはなかったのだ。今回ばかりは、DIOは何一つ悪いことをしていない。そうとは分かっていても、DIO見る度自覚したばかりの恋慕は承太郎の心拍数を荒げ、記憶の奥底に封印したつもりでいるDIOの残り香が劣情を誘引する。とても平常心ではいられなかった。辛うじて取り繕えているつもりでいるポーカーフェイスなどは、いつ剥がれてしまうか分かったものではない。
「……あ」
底のない感情の沼に沈むよう微睡みかけていた脳が、はたと思い出した単語によって覚醒する。シーツ。吐息のような声で呟き、承太郎は背もたれに預けていた体を起こした。承太郎が精液の数滴ばかりを零してしまったくたびれたシーツは、未だ取り換えられぬままにいる。忘れていたわけではない。DIOが部屋に籠りがちになってからというもの、替えに行くタイミングが掴めなかったのだ。
意を決し、承太郎は立ち上がる。向かう先は、半分開け放たれたDIOの寝室である。そっと扉に手をかけ、中を覗き込んだ。予想通り、そこにDIOはいない。ぶちまけられた衣服と本が部屋のあちこちで静かに佇む光景があるのみである。ふう、と安堵とも諦めとも取れる溜息をつき、承太郎は背を翻す。次の行き先は自身の寝室である。DIOの部屋を見てからだとやたらに殺風景に感じる寝室の一角から、洗い替えのシーツを引き摺り出す。そして再び、隣のDIOの部屋へと向かう。やはり、散らかっている。静かなのに騒々しい。せめて本くらい片付けろ、とは思えども、どことなくDIOらしいようでもあるその部屋の有り様を、妙に愛しく感じた。その次の瞬間には首を振り、何を甘いことばかりをと奥歯を噛む承太郎である。
3日も経てば、散乱する衣服を乗せたシーツのどこに自身が零したものの染みが残っているのかは分からない。ただ、承太郎は確かにそのシーツの上で自慰をした。DIOが寝起きするシーツに顔を埋め、DIOのあられもない姿を妄想し、その名を呼びながら白濁を吐き出した。幻だ、夢だったのだと誤魔化してしまうには、あまりにも生々しい記憶である。なにせ、ベッドサイドに立っているだけで過日の快感、罪悪感を伴った酷く甘美なそれが、沸々と蘇る。承太郎の喉が鳴った。熱い唾液が、喉元を流れてゆく。そして、なにを馬鹿なことをと首を振る。行為の後にやってきた、窓から飛び降りて死んでしまいたくなる衝動も、昨日のことのように生々しく記憶されているからだ。
一時の欲に流されてはいけない。承太郎は無心を決め込み、勢いよくシーツをベッドから引っぺがした。衣服の山が飛び散るように舞い、甘い香りがふわりと漂う。無心、無心である。何も考えてはいけないのだ。承太郎は唇を噛みしめ、真新しいシーツをセットするために柔らかなベッドに乗り上げた。そしてベッドとシーツの端を合わせるべく、しゃがみ込んだその時である。

「承太郎、なにをしているのだ、貴様」
「――!!」

背後から投げかけられた声に呼応し、反射的に承太郎は振り返る。足元に溜まっていたシーツに爪先を取られ、承太郎の巨体は枝から落ちる葉の如くふらりと傾き、横向けにシーツの上に墜落した。慌てて起きあがる。驚愕に見開かれた緑の瞳の先には、体を扉の影に隠したまま、首だけを覗かせるDIOがいる。なにやら妙に、強張った顔をしている。普段のDIOであれば、承太郎の失態を指さして笑う場面である。
「いたのか、お前」
「外に出ていた。今帰ったばかりだ。それで、貴様は」
「ああ――その、シーツを」
「シーツが、なにか」
「最近替えてなかったろう」
動揺を押し隠し、承太郎は平坦な声で答える。なにもおかしなことを言ってはないはずだ。そうは思えども、一向にDIOは警戒態勢を解こうとしない。心臓の音が姦しい。吐きそうだ、と承太郎は思った。
「……それだけか?」
「他になにがあるって言うんだ。てめーが読む本なんかには、興味ねぇぜ、俺は」
「本当の、本当にか?」
「本当だ」
「……本当に?」
「……一体何を疑ってやがるんだ、お前は?」
「それは――その、ええと、そのだな」
DIOが、恥じ入るように顎を引く。白磁の頬には、淡い薄桃色が塗りたくられていた。官能的な色。3日目、洗面所の前至近距離で見たそれと寸分変わらぬ光景である――と、3日前のDIOを思い出した瞬間、うっかりと察してしまったものがあり、承太郎は無意識にあ、と頓狂な声を上げた。顔を上げたDIOは所在無く唇を開閉させ、頼りなく細められた双眸で承太郎を見る。
よせ、言うな、言わなくても分かる、言わないでくれ――どうか、知らないふりをしていてくれ。
承太郎の腹の底からの叫びは、しかし言葉になることはなかった。

「またわたしの部屋で、ま……ますた、べーしょんをされては、かなわんのだと、このDIOは、このDIOは……」

――やっぱり見てたんじゃあねぇか、お前。
絶望、脱力、を通り越して、承太郎の頭に血が上る。怒っているのではない。ただただ承太郎は、混乱した。密かに想っていた相手に、自慰行為を見られていた。下手をすれば名前を呼びながら果てた瞬間さえもが、見られていた。20歳を目前に控えた青年には、到底耐え切れる羞恥ではなかった。ベッドに両手を突いて身を乗り出し、承太郎は、感情のままに喚き立てた。
「な――なにを馬鹿みたいに赤くなってやがるんだ、お前は!?そのなりでカマトトぶろうってのか、くっそ似合わねぇにも程がある!」
つまりは、逆切れである。
「は――え、はぁ!?な、何故わたしが罵られねばらならんのだ!?責められるべきは承太郎、貴様ではないか!許可なくわたしの部屋に侵入し、それだけでも腹を蹴られても仕方のない無礼だというのに、あろうことか貴様は、貴様は、わたしの部屋できょ、局部を露出して――!」
「お前の部屋がもうちょい小ざっぱりしてりゃ、こんな部屋に入る用事なんかなかったんだぜ!」
「とことんまでにわたしのせいにするつもりか、貴様!!」
とんでもない責任転嫁をしようとしている。承太郎も、頭の片隅では分かっているのだ。本当は、詫びたかった。お前の部屋を、お前自身を汚すような真似をして、本当に申し訳ないことをしたと思っていると、頭を下げたかったのだ。
しかしできない。爆発する感情の奥底に鎮座するDIOへの恋慕劣情が、心のどこかにある「お前が馬鹿みたいに俺を惹きつけるものだから自慰なんぞをする羽目になってしまったのだ」という身勝手が、どうして察してくれないのだ、俺はお前のことでこんなにも自分を崩してしまっているというのにと、詫びることを許しちゃくれない。
子供の駄々に似た意地である。感情の制御が、利かなかった。DIOによってもたらされた、承太郎の初めての暴走だ。
「~~だから、なんでてめーはそんなに赤くなってやがるんだ!?」
未だ半身を扉の影に隠したままのDIOは、遠目に分かるほどに真っ赤になっていた。もはや薄紅などという可愛らしい色彩ではない。かの紅色は、混乱の渦中の承太郎であっても思わず息を呑んでしまう程、暴力的に官能的だ。ひたすらに、承太郎は苛立った。簡単に劣情を催してしまう自分自身にも、普段のイメージとはかけ離れた、やたらに可憐ぶった様子を見せるDIOにだって。
ここに居るのは本当に俺とお前であるのだろうか。この情けなく喚く男と、初々しく頬を染める男は本当に、『承太郎』と『DIO』であるのだろうか。もう、訳が分からない。承太郎は額に手を当て、かぶりを振った。
それでもただ一つだけ分かるのは――ただただ、自分は『DIO』という吸血鬼に惹きつけられてならないのだということだ。自慰に及んでしまう程に好きで好きで、徹底的に犯し倒してやりたくなる程欲しくてたまらず、くたくたにとろけた体を一晩中抱きしめてやりたいと思う程に愛おしく仕方がない――とにかく、好きだ、好きだ、恐らくは恋を、しているのだ。
強烈に自覚するたった一つの感情に、承太郎の現実が音を立てて崩れてゆく。散らばった服も本も打ち捨てられた模型の破片も、もう何一つ承太郎の目には映っちゃいない。承太郎はただDIOだけを、嵐のような感情を込めた瞳で睨みつけた。
「――わたしだって好きで、こんなみっともない顔を晒しているのではない!」
鋭い刃のような視線に、しかしDIOは一歩たりとも引かなかった。むしろ半開きの扉を開け放ち、承太郎目掛けて大股で歩いてくる。血が上ってしまっているのはDIOも同じである。元々感情的になりやすいのは、DIOの方だ。

「貴様も馬鹿な男だなぁ、承太郎!?そうやって、言いたいことなどは周囲がそれとなく察してくれるはずだ、わざわざ言葉にする必要はないのだと片腹痛い硬派を気取っているものだから、いつまでたっても貴様は腹の底に不発弾を抱え込む子供から脱却することができんのだ!」

ぼふりと音を立てながら、DIOがベッドに乗り上げる。そして承太郎を挟み込むようにマットレスへ両手を突き、鼻先まで顔を接近させた。真っ赤な顔を、嗜虐的な笑みに歪めている。しかし、吊り上げられた口の端は引き攣って、意地悪く細められた両目にはぼんやりと涙が浮いていた。

「ほら、言ってみろよケツの青いくそガキよ!ぼくはあなたに欲情しました、あなたを見ているとペニスが膨れて仕方がないのです、だから抜きました、抜きました、あなたの部屋であなたの匂いの残ったシーツに顔を埋めながら抜きました、さいっこうに気持ちがよかったですごめんなさい、もうしませんごめんなさい!泣いて詫びながら、今度はこのDIOの目の前でそのだらしないペニスを扱いてみろよ、承太郎!?見ていてやろう、このDIOがッ!わたしは触らんからな、汚い汁をわたしに引っ掛けようものなら殺すぞ貴様!」

まるで、袋小路で毛を逆立てる小さなネコだ。淫猥な言葉を強要される処女のようだ。赤味を深めてゆく頬に、頼りなく揺れる瞳、上擦る声。もしかするとDIOは、見てくれよりもずっと性的な事柄に疎い男であるのではないだろうかと、承太郎は頭の片隅でそう思う。それほどまであからさまに、今承太郎の目の前にいるDIOは虚勢を張っているようにしか見えなかったのだ。
「な――なんとか言ったらどうなのだ、承太郎よ!」
承太郎の頭に溜まる熱が、ざっと音を立てながら、波のように引いてゆく。承太郎は、凪いだ瞳でDIOを見た。一見すれば怒りと混乱が落ち着き、平静を取り戻したかのような様子である。しかし、実際は逆だ、逆なのだ。
――腹の底に不発弾を抱え込んだ子供。DIOが勢いのまま適当に言い放ったその一言が、理性の殻を跡形もなく吹き飛ばす。事実であったからだ。不発弾のようなDIOへの恋慕、劣情を抱え、それを言葉にして伝える勇気もなく、隙を見て自慰に励むしかない子供。事実である。それ故に許し難かった。どうしてそこまで分かっているくせに、この恋慕は察してくれないのか。やはり子供の駄々である。DIOへの我儘と強烈な自己嫌悪に、承太郎の精神は今にも砕かれんばかりに圧迫された。
その結果が、

「ああ――確かに俺は、お前で抜いた」

暴走の加速である。承太郎はDIOの右手首を、掴み上げた。
「……!」
「ずっとてめーに欲情してた。だから抜いた。お前の服とシーツに顔を埋めて、頭の中でお前を犯しながら、ここで抜いた」
「~~改めて言われなくても、知っている!」
「お前が風呂上りに半裸でふらふらしてる時も、リビングで腹出して寝てる時も、ずっと、ずっと、お前をどうにかしてやりてぇと思ってたんだぜ。馬鹿みてーに無防備なお前を見る度に、俺は、」
「やめろ、承太郎……不愉快だ、聞きたくない……」
「……今だって、正直すげぇ興奮してる」
「じょ、じょうた――!!」
掴み寄せたDIOの手を、承太郎は自らの下半身に押し当てる。厚手のジーンズに押さえ付けられた性器は沸々と体積を増し、既に痛みに似た圧迫感を訴え始めている。承太郎は唇を噛み締め、そして、笑った。
笑わなければやっていられなかった。DIOへの申し訳のなさ、死にたくなる程の自己嫌悪、それでも止めることの出来ない情動は、もはや承太郎1人でどうにかできるものではなかった。そんな所まで来てしまった。DIOという吸血鬼に、骨の髄までイカれてしまっている。笑うしかない。サディスティックに歪む緑色の双眸の、奥の奥、埋め火のように燻る『助けて欲しい』、燃えるような恋慕に翻弄される年若い青年の救難信号は、しかし泣きそうな顔で承太郎を見上げるばかりのDIOに汲み取ってはもらえない。DIOだって酷く混乱をして、感情の行き場を見失っている。
「抜いてくれ」
どうにでもなれ。自棄である。承太郎はもう片方の手でDIOの頬を包み込み、赤色の瞳を覗き込んだ。
「できるだろ?手ぇ動かすだけだ」
「なぜわたしが、承太郎のペニスなどを触らねばならんのだ……そんなもの……」
「頼んでるんだぜ、俺は。他でもないお前に、頼んでる」
「……!な、なぜ貴様はそんなに、わたしを……同性愛者だというわけでもあるまいに……!いつぞやは酒を飲みながら、猥談をしたこともあったろう……」
「お前だけだ」
「……、」
「お前にだから欲情するし、欲しいと思うし――お前に、わたしには承太郎しかいないのだとか、そんなことを言わせることができたならどんなに幸せなんだろうかだなんて、そんなことすら、俺は、」
「は……はぁ……?」
「……っ、」
DIOが、真ん丸に丸まった瞳で承太郎を見る。思わず承太郎は目を反らし、舌打ちをした。
好きだ。好きなのだ。DIOへの感情をとてもとても簡潔にまとめたその一言だけが、どうしても言えなかった。その可愛らしい響きが、無性に気恥ずかしかった。かつては命を取り合った仲であり、同性でもあるDIOとの関係を、ありふれた『恋』なるものへと落とし込んでしまうことが照れくさかった。馬鹿馬鹿しいとも、思っていたのかもしれない。
誤魔化すように、承太郎は下半身に押し当てたDIOの手で、自らの性器をジーンズ越しに愛撫する。痛い、痛い。圧迫される下半身も、切迫してゆく精神も、何もかもが痛かった。

「お前に、『おねがい』してるんだぜ。そう難しいことでもないだろ?なあ、DIO――様?」
「……馬鹿なことを……!」

皮肉以外の何ものでもない呼びかけである。承太郎の緑の瞳に映るDIOは、どこか傷付いたような面持ちで、俯いた。どうしてDIOがそんな顔をするのか分からない。DIOの視界の外で承太郎は、笑顔を引込め目を瞑る。そして衝動のまま、DIOを片腕の中に抱き込んだ。
「……し……仕方のない、子供だな……」
蚊の鳴くような声で、DIOが呟いた。承太郎が反応を返す前に、厚いジーンズに押し付けられた右手の先がぎこちなく蠢き、ジッパーを引き下ろす。開放感に、承太郎の喉が低く鳴る。盛り上がったグレーの下着の頂点部には、濃い染みが滲んでいた。
「承太郎」
耳元で囁かれたDIOの声は、やはりか細い。緊張がありありと滲んでいる。それでも言葉尻だけは、とろけるような甘い情欲に掠れていた。
承太郎はDIOの首筋に額を押し付け、はあ、と熱い息を吐いた。視線の先では、DIOの生白い手に握られた赤黒い性器が、耐え切れぬとばかりにカウパーを漏らしている。
まるで夢を見ているようだ、と承太郎は思う。瞬きをした拍子に腕の中のDIOは立ち消え、1人このベッドに転がる現実に突き落とされてしまうのではないか。自分はまたDIOのベッドで自慰に耽っているだけなのではないのだろうか――3日前のように。
「……DIO……、っ……DIO……!」
なので名前を呼んだDIO。うわ言のように、何度も何度も繰り返す。抱きしめた体が幻ではないことを確かめるべく、傷跡の残る首筋に鼻先を押し付ける。甘い香りに、果てしなく情欲を掻き立てられた。いつの間にか、承太郎の腰は浅ましく揺れていた。
「は――はしたない男だなぁ、承太郎?こんなに大きくして、犬のように腰まで振って、貴様という奴は、まったく、まったく……一度はこのDIOを粉微塵になるまで砕いた男が、なんと、なんともまあ、情けない……!」
「っく、ぁ、あ……!」
「きっ、貴様は、そんなに、そんなにも!このDIOが、欲しかったのか!」
尚もDIOの首筋に顔を埋めたまま、承太郎は激しく首肯した。視界の外で、息を呑み、今にも泣きそうに顔を歪めたDIOなどは、見えていない。必死だった。DIOの手によって与えられる快感を追うことに、ようやく捕まえたDIOの体を抱き締めることに、とかく承太郎は必死だったのだ。
「承太郎、答えろ貴様、承太郎――!」
DIOの声にも、必死の色と、涙の気配が混じり出す。何故お前が泣くことがある。その理由を、承太郎はやっぱり知らない。

「貴様はわたしを、このDIOを、一体どうしたいというのだ!承太郎、承太郎……!」

DIOが承太郎の抱え込んだ沼のような感情を知らないように、承太郎だって、DIOが日々何を考えて生きているのかということを知らなかった。きっと、無理をして知らなければいけないことではない。何もかもを理解しなければ、関係が築いてゆけないというわけでもない。
それでも承太郎は、知りたいと思うのだ。DIOの何もかもを理解して、この吸血鬼を、自分だけのDIOにしてしまいたかった。この世の頂点から引きずりおろし、自分の腕の中へ閉じ込めてしまいたいたかった。愛しているからだ。それなりの時間をかけて育まれてきた微熱のような愛情が、無為な自慰行為を経て今、DIOの前で爆発をしようとしている。
承太郎はかぶりを振った。こんな愛情など、激情などは、知らない。怖い。恐ろしい。それでもなかったことにはしたくない、決して、決して!湧き出て止まない愛情を塗り込めるように、承太郎はきつくきつく、DIOの体を抱き締めた。
「~~俺はッ」
また1つ、タガが外れる。瞼の裏が白んでゆく。ホワイトアウトの寸前に思い浮かんだのは、やはりDIOだ。DIOとの日常のあらゆる場面が、溢れるように再生される。たまらなかった。たまらなく愛おしかった。
「お前にはもう俺しかいないんだぜってことを、思い知らせて、やりたかったんだ!お前がもう無理だって泣くまで犯し倒して、くたびれたお前を3日3晩抱き締めて――そういうことを、俺は……!」
「っ、それは、性欲を都合よく解釈しているだけだ!性欲塗れの若造が、後ろめたい欲求をお綺麗な感情で誤魔化そうとしているだけだ!」
「~~好きだと思えば、勃つだろう、抱きたいと思うだろう!俺は何か、おかしなことを言ってるのか!?」
承太郎は顔を上げる。そして両手でDIOの頬を包み込み、今にも唇が触れ合わん距離で吸血鬼の美貌を覗き込む。吊り上った眉は虚勢に震え、痛ましく細められた両目には今にもこぼれそうな涙が溜まっている。頬は赤い。真っ赤な頬は、熱かった。

「す――好きでもなければ、男相手に勃つわけねぇだろうが!」

赤い瞳に映る承太郎だって、虚勢がありありと見て取れる、情けない顔をしている。
DIOは目を見開いた。きょとんとした無防備な顔で、呆けるように承太郎を見つめている。
居た堪れなかった。あまりにも。承太郎は、DIOの頬から手を離す。そしてよれたシーツに後ろ手を付き、あさっての方向へと視線をやりながら小さく続き、と呟いた。胡坐をかいた足の中心で、性器は絶頂を待ち望むようにどくどくと脈打っている。
「……承太郎」
「……なんだよ」
「……なにやらわたしも、若干、勃ってきたのだが」
「はぁ……?」
承太郎の性器を握ったまま、DIOはおずおずと足を開く。薄手の下衣は、たしかに少々、股間の部分が盛り上がっているようだった。
「お前……今の今でそんなこと言われると、期待しちまうんだが、こっちとしては」
「こ、このDIOが、好きだの愛だのといったくそ下らん情についてなど知るものか!ただわたしは……わたしは」
DIOが身を乗り出し、承太郎の顔を覗き込む。物言いたげに戦慄く唇の端からは、鋭い牙が覗いていた。数秒、切実な瞳でまっすぐ承太郎を見つめた後に、DIOはふい、と目を反らす。そして握った性器の先端に爪を立て、ぐりぐりと力任せに、愛撫した。
不意を打つ強烈な刺激に、承太郎の顎と背筋が仰け反った。ぽっかりと空いた唇からは唾液が零れた。やがて激しく全体を扱かれ、生々しい水音が耳に障り出す頃合いには、吐息はすっかり嬌声へととろけていた。
喘ぎながら、承太郎は涙の滲む目でDIOを睨む。DIOは尚もどこでもない場所へと目をやりながら、低い声で呟いた。

「……きっと貴様のことが、嫌いではない……とっくに嫌いでは、なくなってしまっているのだろうと、思う……」

とてもとても拙い言葉で紡がれた、DIOなりに承太郎に傾けているのだろう、恐らく未だ無自覚であるのだろう愛情の切片を。
恥じ入るように俯いたDIOは、悔し気に眉を寄せている。そして鬱憤を晴らすかのように、搾り上げるように承太郎の性器を扱いた。迸る先走りで、透き通るような白い肌はべたべたと濡れている。
「~~っ、……ぁ、ぅ、あ、くっ、ふ……!」
奥歯を噛んで顎を引き、承太郎は与えられる快感に耐える。耐えながら、震える腕をゆっくりとDIOへと向かって差し伸ばした。やがて指先が触れたのは、反応を見せ始めているDIOの性器の先端である。一瞬、DIOの手の動きが止まる。その隙に承太郎は、衣服越しに、DIOの性器を握り込んだ。
「な、なにを、承太郎っ」
「……そのままじゃあ、辛いだろう」
「本音は!」
「……俺だけが喘がされっぱなしじゃあ、悔しいじゃあねぇか」
「貴様が抜けと、頼み込んできたのだろうに!なにを――あ、あっ、ん……!」
衣服越しのもどかしい刺激に、DIOは震える。それでも承太郎を慰める掌は、ぎこちなくも止まることなく動いている。
いつの間にか酷く重くなってしまっていた腰を持ち上げ、承太郎は這うようにDIOへと接近した。指先で下着ごとDIOの服をずり下げてやれば、勃起し反りかえった性器が零れるように姿を現す。DIOの頬の赤味が増した。見開かれた双眸は、信じられない、と言わんばかりに自身の下半身を見つめ、やがてはとろとろと泣きそうに細められた。
承太郎は、自身の性器とDIOのそれを密着させる。背筋が粟立った。下半身で繰り広げられている光景が、あまりに淫猥だったのだ。
「じょ、じょうたろう」
「……おまえも手伝えよ、オラ」
「あっ……ぁう、ん……あ、あ、は……」
重ね合わされた2本の性器が、ぐちゃぐちゃと濡れた音を立てている。どちらがどこを触っていて、一体どの部分同士が触れているかなんてことはもう、分からない。ただ、承太郎にとっては恋をした男、DIOにとっては嫌いではない男と淫らな行為に及び、加熱するばかりの熱によって融けあってゆくような感覚が心地よかった、気持ちがよかった。泣きたくなる程の感慨すらも、やってくる。
DIO。承太郎。名前を呼びあうことも放棄して、2人はただただ、熱に喘いだ。吐息は熱い。嬌声はどこまでも甘く、とろけている。そしてやがて目が合うと、数秒、あるいは数十秒を掛けて見つめ合ったのちに、どちらからともなくキスをした。両目は固く閉ざされ、口先は震えている。ほんの一瞬触れるだけで離れてしまった、児戯にも等しいキスだった。
あまりにもの馬鹿馬鹿しさに、承太郎は苦笑する。一拍遅れて、つられるようにDIOも笑う。
「満足にキスも出来んのか、承太郎よ、この青二才」
「青二才に全部任せようとするなよ、じじい」
意地悪く、それでもどこか穏やかにゆるんだDIOのかんばせが、愛しかった。少々の躊躇の後に、承太郎は赤い頬へキスを落とす。笑顔を引込めたDIOは、恥ずかしいことをするなよと、尖った口先で呟いた。
DIO。耳元で呼びかけながら、承太郎はマットレスにDIOの体を横たえる。自身も倒れ込むようにDIOの首元へ顔を埋め、そして、扱いた。遠からず絶頂へと至るのだろう自身とDIOの性器を、滅茶苦茶に扱いたのだった。もはやDIOの手などは、添えるだけの華と化している。
「ああっ、あ、くぅ、ひ、ン、あ、あああ」
「っ、っべぇ、っぅあ、あ、DIO、いくッ、出る……!」
「わ、わたしも、だ、だしたいっ、ぁ、じょ、じょうたろっ、あ、あッ」
「~~っ、てめーも手伝えよ、さぼんな馬鹿!」
「むりぃ、むりっ、こ、こんなのわたしっ、あ、ああああっ」
「あっ、っく、DIO……DIOッ!」
「じょーたろ……!」
承太郎の大きな掌が、ひと目と目に性器を扱く。震えるDIOの掌が、並んだ亀頭をくりくりとこねくり回す。
絶頂へと至る直前、承太郎は身を起こし、再びDIOにキスをした。今度はねっとりと唇を重ね合わせ、突き入れた舌で熱い口内をぎこちなく、けれど激しく凌辱した。溢れる息が、声が、唾液がカウパーが混じり合い、どこからどこまでが『承太郎』で、どこまでが『DIO』であるのかを、承太郎は見失う。恐怖はあった。不安もあった。しかし何をおいても、幸せであるのだと、そんな感情ばかりが先走ってならなかった。
DIO。ほんの数ミリの隙間で、承太郎はDIOを呼ぶ。
承太郎。掠れた声で呼び返し、DIOは目を細め、微笑んだ。
「承太郎、気持ちいい、とても、とても……!」
「ああ……ああ、俺も……とんじまいそう、だッ」
「でるっ、もう出るぅ、じょうたろっ、あ、も、だめぇっ」
「俺もだ、俺も――DIO、DIOっ、ぁ、っうぁ、あ……!!」
「ああっ、あ、ああああ……!」
迸る白濁が混ざり合い、2人の手、仰向いたDIOの腹を汚してゆく。びゅっびゅと白濁を零し続ける性器を握ったまま、やはりどちらからともなくキスをする。果てしない充足が、そこにあった。少なくとも、承太郎にとってはそれだけだった。自分はずっと、これが欲しくてならなかった。溢れる感慨を堪え、何度も顔を傾けながら、承太郎はDIOの口内を貪った。
「……抱きたい」
「承太郎……?」
至近距離で、荒い息が混ざり合う。息を整える間も惜しかった。震えだそうとする口先を叱咤して、承太郎は、低く押し殺した声でDIOへ向かって囁いた。

「お前を、抱きたい」

DIOの目が、泳ぐ。泣きそうな顔で、忙しなくあちこちへ視線を漂わせている。承太郎は待った。強引に抱いてしまいたい衝動を押し殺し、じっと静かにDIOを待った。ずっと、無理矢理に凌辱してしまいたいと思っていた。それはそうでもしなければ、この頑なな吸血鬼にこの恋慕を思い知らせてやれないと思っていたからだ。しかし今は、そうする必要がないことを知っている。急いて強硬的な手段に出なくても、きっとDIOは自分を受け入れてくれるのだろうと、半ば確信的に承太郎は思う。
やがてDIOは承太郎の全てを許容するように、震える唇で、ちゅっと小さなキスを寄越してきた。




一晩が明けた後の浴室にて、頭を抱える承太郎である。さあさあと全身を打ち付ける40℃の温水はそれはもう心地よいものであったのだが、頭の中は爽快とは程遠い。煮え切らぬ気分のまま義務的に髪と体を洗い、承太郎は脱衣所へと移動した。バスタオルで全身を拭きながら思い返すのは、昨晩の記憶である。

『い――い、いたいいたいやめろ承太郎殺すぞ貴様抜け痛いやめろ死ぬ!死ぬ!死ね!』

結果から言えば、昨晩承太郎は宣言通りにDIOを抱くことができなかった。受け入れる箇所である後孔を解すところまでは、なんとか2人で協力して漕ぎ着けた。後ろを指で弄られている時のDIOのかんばせは、じわじわと蕩けていった。とても気持ちよさそうにしていたのだと、承太郎は記憶している。
しかし、その先である。たっぷりゆっくり時間をかけて愛撫を施す間、ずっとお預けを喰らっていたようなものである承太郎の性器は、凶悪に膨れていた。それを見たDIOはひっと息を詰めたものだったし、承太郎自身だって本当にこんなものがこの狭い穴に入るのかと、今更ながらの不安に襲われたものである。
先に覚悟を決めたのはDIOだった。ふはははと居丈高に笑いながら、何を恐れることがあるのだ承太郎、と爪先で戯れるような蹴りを寄越してきたものである。勿論、空元気の虚勢張りだった。真剣な顔をした承太郎が片手でそっと頬を包みながら、無理をしなくてもいい、と囁けば、高慢な表情はゆっくりと崩れ、か細い声ででかすぎるだろう、と零したのだった。
そこでやめてやることは、承太郎にはできなかった。だからありったけの謝意を込めて、悪い、と一言、三つの黒子の並ぶ耳元で囁いた。そう気を遣うな、気色悪い、と尚も虚勢張りを忘れないDIOを、承太郎は重ね重ね愛おしく思ったのだった。
そしてゆっくりと挿入した。汗ばむ金髪を撫でつけながら、柔らかな頬にキスを落としながら、承太郎は育った熱をゆっくりとDIOの体内に埋めていった。先端が入り繰りをくぐった辺りで、他者の侵入を拒む激しい締め付けに、承太郎は唸るような声を上げた。DIOから与えられる物ならば、圧迫感すらも心地よかったのだ。
DIO。
承太郎は微笑ながら、DIOの両目を覗き込んだ。
承太郎。
涙交じりの声で呼び返したDIOが、次にその口で零したのが――

(……死ねはないだろう、死ねは)

冒頭の、暴言じみた悲痛な叫びなのだった。

部屋着のシャツとパンツを着込みながら、承太郎は曖昧な溜息をつく。結局セックスは失敗し、DIOはさっさと気絶するように寝てしまったものだから、事後の触れ合いを楽しむこともなかった。それでもセックスの代わりに行った、素股。DIOの閉じた足の間や臀部の合間に性器を擦り付ける行為で、それなりに満足してしまっている自分の安っぽさが、どうにも滑稽に思えてならなかったのだ。

『へ、変な感じがするな、承太郎……まるで貴様に犯されてでもいるかのようだ……いや、貴様は本当は、そういうことをしたかったのだったな……』

疑似性交に於いては、へこへこと腰を振る承太郎とは正反対に、DIOは仰向けに横たわるだけだった。承太郎の性器が自身のそれを掠めた時などには鼻に掛かった甘い息を漏らしたものだが、とろとろと細まった双眸は、気持ちが良いというよりも今にも眠りに落ちようとする者のそれだったのである。

『……気持ちいいか、承太郎?』
『……割と』
『そうか……』

どこか気まずく、煮え切らない会話である。やがて承太郎がDIOの腹や胸へ性器をぶちまけた頃合いには、DIOは穏やかな寝息を立て、すっかり眠ってしまっていた。
たったそれだけの接触で満足できる程老成しちゃいない承太郎が、今日はもうこれでいい、満足だと眠りに就けたのは、偏にDIOの寝顔があまりにも安らかだったからだ。自分の隣で眠るDIOが愛しかった。その眠りを邪魔することを、したくはなかった。なので承太郎は心のどこかで息ずく『強引に犯してしまえ』、そんなろくでもない衝動を飲み下し、平穏な一夜を過ごすことができたのだった。
朝になった今は、やっぱりちゃんとセックスをしたかった。そんな後悔ばかりが湧き出て止まないのが、承太郎という男の若さである。

「……承太郎」
「!?」

リビングへと出た瞬間、どこからともなく聞こえてくる地を這うような低い声に、承太郎の肩が跳ねる。ふっと目を向けた先には、半開きになったDIOの部屋への扉がある。
「……DIO?なにしてんだ、お前」
目を凝らせば、扉の影に体を隠し、首だけを覗かせたDIOがじっとりと細まった目で承太郎の様子を窺っていた。どうやら頭からすっぽりシーツを被っているらしい。不気味な雰囲気を助長させている。
「……わたしにはもう、貴様しかいない。貴様しか頼れるものがない」
「……はあ?」
「今更言われなくても、わたしはちゃんと、知っている……というか、そう思って、このつまらん日々を過ごしてきたわけであるのだが」
「そ――そうなのか」
としか、答えられなかった。DIOの口からそんな殊勝な言葉が飛び出す日がこようとは、ちっとも思っちゃいなかったのだ。
「だ、だからと言って、貴様とその……するのが嫌だというわけでは、なくてだな」
「……結局なにが言いたいんだ?お前は」
「~~どうせここにはわたしと貴様しかおらんし、わたしはもう暫くはここにいてやるつもりでいるのだから、焦ることはないのだということだ!以上!わたしは寝る!もうわたしの部屋で自慰なんぞをしてくれるなよ、承太郎め!」
「あ、お、おい、DIO!」
一歩を踏み出す暇もなく、寝室の戸は音を立てて閉じられる。しばし途方に暮れた後に、一先ず承太郎はソファーへどっかりと腰かける。そしてじわじわと湧き出て止まぬ幸福感に頬を染め、やがては頭を抱え俯いて、深い溜息をついたのだった。

好きだ。どうしようもなく、お前が好きだ。

薄いドアを蹴破って、その向こうで腹を出して寝ているのだろうDIOにそう啖呵を切ってやる勇気は未だない。






暴走してても「好きだ」だけは簡単に言えない承太郎にこう、こう、滾ってならんのです…!


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