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1年ぶりに寄越された手紙に同封された写真の中でDIOが笑っていた。
20年前と変わらずにやたらと強い意志を秘めた血の色の両目、しかし20年前よりも少々青白くなったように見える肌は痛々しく、なのにこの男は20年前から変わらず美しいまま――いいや、いいや、もしかすると20年前に輪をかけて、写真に映し出されたDIOは美しくなってしまっているのかもしれなかった。
表情の険が取れている。
咽返るような毒々しさがすっかり薄れてしまっている。
俺の元へ届けられたのは凶悪な吸血鬼の写真などではない。この世界のどこかの窓辺で何かを諦めたような笑みを浮かべる、ただひたすらに美しいだけの男の写真であったのだ。
俺の知らない場所で、DIOは変わってしまったようだった。俺がとっくの昔に、モラトリアムを謳歌する小僧ではなくなってしまったのと同じように。
DIOが変わった。
俺の知らないDIOが、この世界のどこかで息をしている。

会いたいと思ってしまった理由などは、きっとそれだけで充分だ。


静まり返った真夜中の寝室は、端から端までを薄闇に制圧されてしまっている。電気を付けようとスイッチへと手を伸ばすも、5秒ばかり逡巡した後に結局はやめにした。
開け放たれた窓から吹き込む冬の風。
はらはらと忙しなく舞うカーテンの向こうに浮かぶ月、上方が少々欠けた月。
降り注ぐ青白い月光が、天蓋付のベッドを淡く照らしている。
蛍光灯の無粋な光で散らしてはならない光景であるのだと思った。そんな馬鹿馬鹿しいことを瞬間的に思ってしまったものだから、俺は足元に散らばる視認不可能の有象無象、恐らくは本と服の山々に足を取られぬよう少しずつベッドとの距離を縮める他にない。
ベッドサイドに辿り着き、柔らかな天蓋を捲る。
世界中のあらゆるものから守られるように隠されたキングサイズのベッドの上では、DIOが酷い寝相で昏々と眠っている。

「……ふ、」

失笑した。あまりにも、20年前と変わらぬ寝相であったので。
ベッドサイドの腰を下ろし、そろそろ床へと蹴落とされてしまいそうな布団をDIOにかけ直してやる。
「ん……むぅ……」
DIOが苦し気な寝息を立てた。数十秒、迷ったのちに俺は靴を脱ぎ、ベッドの上に乗り上げた。そしてDIOの顔を覗き込む。口が半開きになった間抜けも間抜けなかんばせを。
20年前よりずっと毒気が抜け落ちてしまった、痛々しくも儚いかんばせを。
「……、……ん、ん……?」
「…………、」
金色の睫毛が揺れる。青白い瞼がゆっくりと持ち上がる。
その下から現れた真っ赤な瞳の中には、俺がいた。
「貴様」
「来たぜ。会いに行くって書いただろう。この前出したばかりの手紙に」
「手紙?……まだ届いていない」
「俺の方が手紙より早かったんだな」
「……耐え性のない男だな」
「ああ……すまん、どうにも気が、急いた」
「……」
「………、」
言葉が途切れた。見つからなかった。
いいや、最早語る言葉などはどこにも残ってはいなかったのだ。
20年だ。人一人が成人するまでにかかる時間を、俺とDIOは言葉のやり取りだけで繋がってきた。20年。面を合わせて話した時間よりも顔を見なかった時間の方がずっと長い。けれど俺は、DIOが行ったことのある場所を知っている。その目で見た景色を知っている。そこで目 にしたものに抱いた感情を知っている。食べ物の好みを、女の好みを、趣味を、嗜好を、思考を、DIOに纏わる沢山のことを知って いる。
今更口を使って語るのも億劫なほどに、俺とDIOの20年には沢山の言葉が溢れていた。
だからなのだろうか。俺は、
「DIO。お前を、抱きたい」
そういうことを、衝動的に望んでしまっているようなのだ。
口が動かないので。言葉がつっかえて出てこないので。つまりは言葉を交わす代わりの代替コミュニケーションだ。話すより寝る方が楽だと思ってしまったのだ。いつの間にか随分と怠惰な大人になってしまったものだと思う。
そんな俺を、DIOはじっと見つめている。隈の浮いた両目で、まっすぐに俺を見つめている。
そして笑った。今も俺の胸のポケットに入っている写真と同じ顔だ。何かを諦めたような、疲れた笑顔。20年前のDIOが決してしなかった顔。
お前がそんな顔をしてしまうに至ったお前の20年を、この俺に教えて欲しい――一旦セックスに溺れ、緊張をほぐした後にでも。
それだけの言葉を紡ぐこともかなわずに、唇は愚鈍に震えるばかりである。耐え切れずにキスをした。初めて触れたDIOの唇は、このまま壊しちまうんじゃあないのかって馬鹿な不安に駆られてしまう程に酷く、酷く柔らかい。
「ん……、」
DIOは金の睫毛の生え揃った瞼を伏せた。そして2本の腕をくったりと伸ばし、俺の後頭部を抱き込んだ。
喋るのが億劫なのはお前も同じだったのか。
しょうもない男になっちまったものだ。お前も、俺も。


まるで世界で2人きりになってしまったようだと思った。柔らかな天蓋の内側にただ2人、俺とDIOの2人だけが。
「……っ、ぁ……ん、ん……ふ……」
決して、DIOのことばかりを考えて生きてきた20年ではなかった。むしろ年々間隔が長くなってゆく手紙を出す頃合いくらいにしか、DIOの顔を思い出すことはなくなってすらいたほどだ。旅先で美しい景色を目にするたびに「そうだDIOに見せてやらなければならない」と、まるで遠地の恋人の心を繋ぎとめようとでもするようなことを思ってきたものであったが、実際の俺とDIOは20年前に少し顔を合わせただけの他人でしかなかったのだというのが実情であるのだという気がしている。
だというのに、現金にも今ここにいる俺というものは
「あっ……ふぅ……は、ぁん……ぁ……」
時間の流れから切り離されたようなベッドの上で、DIOのことばかりを考えている。DIOの痴態だけを眺めている。DIOに出した手紙のことを、あいつが寄越してきた返信の内容を必死こいて思い出そうとしている。
まるで20年の時間を取り戻そうとでもしているかのようだ。
DIOと会いたいと思いこそすれ、本当に会いに行ったことなどないくせに。
「んぁ、ん……あ、ぅあ、ひっ……ん……」
肌蹴たシャツの下から現れた、色素の薄い乳首を啄む。噛み潰してしまわぬように、努めてそっと。
顔を上げれば勃起し唾液に濡れた乳頭と、もう片方の未だ扁平であるそれが等しくこの目に飛び込んだ。倒錯感に喉が鳴った。舐める。吸う。噛む。たったそれだけの刺激によってこうもいやらしく形を変えてしまった乳首が、いじましくてならなかった。
こりこりと硬い乳頭にキスする。DIOは悩ましく身を捩っている。文句はない。その口から漏れ出るのは押し殺しきれなかった嬌声で、両目は夢を見るようにうっとりと伏せられていた。
「ふ、ん……ん……はぁ、ふ……」
掌でDIOの身体のラインをなぞる。見目通りに逞しい体である。筋肉の張りなども、決して100歳超の化石のそれなどではない。
しかし今俺が触れるこの身体からは、あの日、いつかのエジプト、圧倒的なパワーで以てこの世の夜に君臨した吸血鬼が垂れ流しに発した漲る生気というものを、微塵も感じることができなかった。
受動的なのだ、あまりにも。
「あ、あ……ん、あ……は……っ」
DIOはくったりと柔らかなシーツに沈み込み、俺が寄越す刺激を諾々と享受している。吐息と共に漏れ出る嬌声もあえかなものだ。DIOらしくないと思う。20年も会っていないし、そもそもDIOとセックスをするのも初めてのことなので床の場に於いてのらしい、らしくないの判断基準などを持っちゃいないのだが、それでもらしくないと、ただそれだけをいくらかの寂寥感と共に強く思う。
DIOの纏う薄い下衣を、下着と共に腿の中腹辺りまでずり下げる。勃起した性器と下着の間で先走りが糸を引き、ぷちりと途切れた。さすがにDIOの頬が少々、赤くなった。それでも開いた足を閉じることもせずに、DIOは涙の膜が浮いた目でぼんやりと俺を見つめるのみである。
「っ、は、っ、っ、ぁ、う、」
後孔に指を突き入れても同様だ。きつく窄まるその穴は、しかし揉むような刺激を食らわせてやれば嘘のように綻びずぶずぶと、異物たる俺の指を飲み込んでゆく。丸まった爪先はシーツを泳ぐように蹴りつけるのみで、決して俺には飛んでこない。赤い瞳は静かに俺の動向を見つめている。
一切の抵抗がない。
DIOは俺の行動の全てを許容し、その身をすっかり委ねてしまっているのだ。
やはりDIOらしくはない。あまりに健気で、素直すぎる。この男がセックスの場でだけこうも変わってしまう可愛げがあるとは思えない。
変わってしまったのはこの男の根本なのだ。届けられた写真を見た瞬間に感じたことを、リアルタイムに実感する。
20年。男1人が結婚をすれば離婚も経験し、帝王気取りの傲慢な男がすっかり消沈しただ美しいだけの男になり果てる。
途方もない時間の重さに、目眩がした。
「あぅ、あ……貴様、いつまで……」
「……もういいのか?加減が分からん」
「いい……あまり広げ過ぎると、骨の髄まで搾り取られるような快感を体験できなくなるぞ……」
「それは……困るな」
DIOの脚を白い胸元に辿り着くまで折り曲げる。下着と下衣を履かせっぱなしなのは趣味だ、そういうのが興奮する。最低限曝け出された臀部と性器の様子は、本当にセックスの為だけに剥かれたのだという趣があって、とにかく興奮してならないのだ。20年前はとかく脱げ、1平方センチメートルでも多く肌を見せろと急くばかりで、こんな性癖はなかったように記憶している。
「……それじゃあ、挿れるぞ」
「ん……」
亀頭を後孔に押し当てる。先端の先端がつぷり、と小さな穴に埋まり、DIOはむずがるように鼻を鳴らした。生白い爪先は健気にピンと伸びている。やはり俺を蹴りつける素振りはない。
そのまま腰を進め、性器をDIOの体内へ沈めてゆく。
熱い媚肉の締め付けはあまりにも気持ちがよく、思わず俺は天を仰いだ。数秒を置いて口の端から涎が漏れていることを自覚するも、拭う余裕などはない。そんなことをしている暇があるなら1ミリでも奥深くDIOの身体に侵入したかった。DIOの膝裏を掴む手に力を込める。ずぶずぶとゆっくり、ゆっくりDIOを犯してゆく感覚が、頭の裏が痺れてしまう程にとんでもなく気持ちがよかったのだ。
「~~っ、っ……!」
「……DIO……?」
DIOの様子が、なにか変わった。押さえ込まれながらも時折漏れていた甲高い声がめっきり聞こえなくなってしまい、代わりに苦しげな吐息に変わったのである。なので名を呼びかけた。上手く呼べたのかは分からない。なにせすっかり息が乱れてしまっている。
DIOからの返答はない。鼓膜を打つのは今にも途切れそうな吐息だけだ。
首を振り、下を向く。零れた唾液が顎の先から滑っていった。目眩と共に、ぐわりぐわりと視界が揺れた。過ぎた快感によって意識がすっかり曖昧になってしまっている。
しかし、
「ふ、っ……ひぐっ、っ、っ、~~!!」
「……!」
両手で口を塞ぎ、見開かれた目から大粒の涙を零すDIOの姿を認めた瞬間に年甲斐もなく理性が焼き切れてしまった気配があった。
喉が獣じみた音を立てた。衝動的に体を倒し、DIOに覆い被さっていた。そして口を塞ぐ両手を無理矢理引き剥がし、シーツの上に縫い付ける。DIOが無防備に瞬いた。涙の粒が、赤く染まった眦を零れ落ちた。
承太郎。
DIOの掠れた声で紡がれたその一言を合図に、俺は半分ほどDIOの中に埋めた性器を引き抜き、間髪を入れずに全てを収めきるまで激しくDIOの身体を突き上げた。
「あっあっあっやっ」
ついさっきまで大人しくしていたDIOが、涙をまき散らしながらもげそうなほどに首を振る。長い両脚は縋りつくように、きつく俺の身体を挟み込んでいた。
今更止まってなどやれるものか。
年甲斐なく興奮に緩む口元を隠すべく、俺はDIOの首元に顔を埋める。縫い目のような傷跡の残る首筋へ噛み付けば、DIOの内壁は歓喜を示すかのごとく収縮した。
「やっ、ひ、あ゛ああっ」
抜き差しをするたびにとんでもない快感が競り上がる。耐えかねて一番奥に亀頭を擦り付けるようにぐりぐりと腰を押し付けると、DIOはとうとう顎を反らし、咽び泣くような声を上げた。どうやらこれがいいらしい。こうも素直に感じてくれている姿を見せてもらえれば、嬉しくも思うものだ。頭を撫でる代わりに同じ刺激をくれてやる。DIOはいよいよ激しくかぶりを振った。
「あ゛、あ゛ひっ、あああ、やっ、あ゛っ、あ゛~!!」
「っ……は……や、べぇ……」
「すごいぃっ、これぇ、これぇぇっ!!」
DIOの手首をホールドしていた筈の両手は、10本の指は、いつの間にかDIOのそれと骨が軋む程に絡まり合っている。汗で滑ってゆくたびに何度も握り直し、俺は窄まる体内へぐりぐりと性器を押し付け、DIOの首筋へ、耳の端へ、目尻へ、頬へ、それしかできぬ阿呆のようにキスをした。
「あっあっ、ひっ、い、いってる、わたしっ、あ゛っ、わ、わたし、あああっ、で、でてないのにぃっ」
「DIO、」
「あ、な、なんでぇっ、だ、だめだじょーたろ、ぬくな!ぬくなっ!!ぬいたらぁっ、――ひあああぁあ!?」
「ぁ、は……とんでもねぇな、お前……!」
「やめろじょうたろっ、や、やめてくっ、や、やっ、やだっ、やだぁ!あっひあっ、そんなにされたらっ、いぐぅっ、おかひくっ、あっ、で、でるっ、でる、あああきひゃうぅう!!」
腰回りが酷く締め付けられている。肩越しに見やった腰元には、DIOの両脚が2度と離してはやらぬと言わんばかりに絡みついていた。痛い。苦しい。しかしその遠慮のなさがどうにも20年前のDIOと重なって、場違いにも湧き出る懐古の念に酷く俺は安堵する。
「あっあっあっもうっもだめぇっあっ、あふっ、あぁあああっ!!」
「んっ……く、ぁ……!」
「あ゛ー、あ゛っ、あ……あ……」
激しい抜き差しの終わりに、俺が届く一等に深い場所へ再び亀頭を擦り付けた。DIOが泣き叫びながら絶頂を迎える。骨の髄まで搾り取られるような快感に流されるがまま、続けて俺もDIOの中で射精した。なにやら、天国を見た心地になっている。熱を吐き出しきった後の倦怠感すらも、酷く、心地が良い。
「あ……あ゛……い、いってるのがずっと……とまらない……承太郎、なんとかしろ……あ、あ……うぅん……」
「……ああ、お前の気が済むまで、な」
「は、ぁ……それで、いい……!」
汗と涙と涎に塗れ、DIOの唯一の取り柄であろう美しい顔はぐしゃぐしゃだ。死ぬほどエロティックではあるが酷く下品であり、みっともなくすらある顔である。
それでもしかし、そんな顔を歪めて形作られた帝王ぶったくそ意地の悪い笑顔が俺には、どうしようもなく愛おしかったのだ。


「……む」

――貴様には妻子があったのではなかったか

こちらに背を向けてベッドに転がるDIOが、肩越しに放り投げてきた紙くずに記されていた1文である。反射的に眉が寄った。それは、と少々ばつが悪くも言い返そうとするも、雑な字のみで質問を投げかけてくる相手に何故俺が喉を搾って声を出してやらねばならぬのか。
返信を書くべくペンを探す。しかし広いベッドの上には見当たらない。確かコートの内側に、と思い至った丁度その瞬間に、DIOがまたしも肩越しに今度はペンを寄越してくる。眉間の皺は深まってゆく一方である。

――だいぶ前に別れた

紙とペンを放りやる。DIOは横向けに寝そべったまま、またも何かを書き連ねている。

――駄目な男だ

ただの悪口である。

――俺が駄目男になっちまうまでの20年、お前は何をしてたんだ

DIOがちらりと俺を見る。それから暫くの沈黙である。静寂が耳に突き刺さる。とても嫌な沈黙だ。
俺は何か聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか。
不安に腹の底がざわめいた。意地を張ることを忘れ、思わずDIO、と呼びかけそうになった瞬間、やはり見計らったようにその瞬間、DIOが返信を寄越してくる。
やたらと時間をかけたくせに、そこに記されていたのはたったの1文だけだった。

――わたしはわたしで在り続けていたのみだ

ただそれだけの、1文だ。

「DIO。おい、お前前に会った時よりも、どうにも具合が悪そうに見えるんだが。できるか、もう一回」
「何を盛っているのだ、中年男め」
ペンが寄越されなかったので声を掛けた。揶揄するような声と共にDIOは振り返り、声に見合う意地の悪い笑顔で俺を見やる。
どうして俺はこんなのがいいのだろう。
そうは思えども、20年前の調子を取り戻した笑顔や声音に抱いた懐かしさと愛しさは本物だ。知らずの内に自嘲が漏れていた。DIOの口の端は吊り上ってゆくばかりである。
「ん……さすがにまだ柔らかいな」
「遠慮知らずの承太郎が、ずぽずぽと好き勝手、やってくれたものだからなぁ……ん……ぁ、はぁ……」
俯せに寝そべったDIOに覆い被さり挿入した。努めるまでもなく、抽挿は緩やかだ。吐息の域を抜けきらぬDIOの嬌声が、酷く耳に心地よい。かさかさと、ペンの先が紙の上を滑ってゆく軽やかな音も。
――ペン?
「……なにやってんだ、お前」
「なに……随分と暇なセックスであるものだからな、っ……ん、ぁふ、ふ……疲れ切った中年男の攻めなどタカがしれているのだぞ、承太郎よ……ふふ」
性器を咥え込んだ臀部を掴み上げ、力任せに撫で回す。少しばかり、挿入が深くなる。それでもDIOはん、ん、と笑い交じりの嬌声だか吐息だかを漏らすばかりで、ペンの音は止まらない。
「ん」
突き付けられた紙に記された文字は、先程までに輪をかけて雑である。読みにくいったらないことだが、セックスの最中に惚れ惚れするようなきれいな字を書かれたって困るというか悔しいので、これでいいのだと思っておくことにする。
汚い文字に目を走らせる。左上から始まって左下。数行に及ぶ文字の羅列。
たっぷり3度。DIOに性器を突っ込んでいることも忘れて雑なメッセージを読み込んだ後に、俺は紙をベッドの外へ放り捨て、無理矢理に振り向かせたDIOへキスをした。
「…………お前なぁ」
「可愛い男だな、承太郎。一息に硬くなったようではないか。いくら人の親になる経験をしてみたところで、お前は20年前からちっとも――ひぅっ」
「お前の前でだけだ。嫌でもお前と居た頃の俺になっちまう。ったく、会うんじゃあなかったぜ」
「……ふ、ふふ、なんだ、わたしだけではなく貴様も――あっ、ああ……あ、ふふ……ぁ……」


――最初の日出の写真につい好意的な感想を述べてしまったばかりに20年も送られ続けてきた、一向にピントがずれたままの貴様の風景写真だが、わたしは案外あれが届くのを楽しみにしていたのだぞ。
なにせ貴様の寄越す便りだけが、ベッドから降りることもかなわなくなったわたしと窓の外の世界との唯一の接点だったものだから。
焦がれていた。
承太郎がその目で見た風景を、わたしも共有したかった。
貴様からの手紙が本当に楽しみだった。
この感情が恋と呼ばれるものならば、わたしはずっと20年、貴様に恋をしていたのだ




お互いの前では出会った頃のままの自分が出てくる系の承DIOすきすき



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