スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

back

2


「――あ゛っ、あっ、ァ、あっ、あ」
カーペットに突っ張ったDIOの腕ががくがくと震えている。赤く色付いた体もぐったりと弛緩しきってしまっていて、律動に合わせ頼りなく揺れるばかりであった。帝王と称されたはずの吸血鬼が、今やさながら甘ったるい嬌声を発することが仕事の愛玩動物である。しかし支配者としての最後の矜持を守るが如く、俺の性器を食んだ箇所だけが強烈に、貪欲に、激しい収縮を続けている。――数分前に一発分注ぎ込まれた精液を、一滴たりとも零したくはないと言わんばかりに。そしてまだまだ足らぬ、もっともっと奥に奥にと、熱い精液を乞い強請るかのように。
「はー、は、ぁ、ふぅ、んっ、あ゛、あっ、ひッ」
シャツの絡んだ腕の片方が、とうとう崩れた。勃ち上がった性器を見せつけるように体を反らし、DIOは尚も喘いでいる。気が変になりそうな程の甘い声に誘われて、俺はDIOの腕を引っ張った。そして、引力に従って倒れ込んでくる熱い体を抱き締める。耳元で名前を呼んでやれば、応じるようにDIOは俺の首筋を舐め上げて、同時に後孔をきゅんと締め付けた。背筋が粟立つ。奥歯を噛む。負けじと下半身を突き上げた。
「あ、ひっ、だ、だめ、こぼれて、ア、やだ、いやだッ、こ、こぼれるのだめぇ、ぁ、ひぃっ!」
「なにが、零れちまうって?」
「じょーたろぉの、せぇえきがぁ……あッ、あぅ、ぅ……」
中途半端にシャツに隠れた白い背を、弓なりにしなる程に抱きしめる。感情の所在などは最早あやふやだ。とにかく俺はかつてなく興奮をしていて、ただただもう気持ちがよくて、そうした快感を与えてくれるDIOのことを、この瞬間ばかりは愛おしいと思ってしまっているようなのだ。
「あー、はっ、ぁ、ひ……」
「……DIO、」
「ぁ、あ……じょうたろぉぉ……」
――まるで、恋人同士ですらあるかのような。そういう、如何ともしがたい愛しさを。
汗ばんだ金髪に指を絡め、DIOの後頭部を引っ張った。そうして久々に見た、ような気のするDIOの顔は、くてんくてんにとろけている。こんなにもいやらしい生き物を、これまでに見たことがない。
「は、はやくぅ、はやくわたしに、おまえの、早くっ、はやく!!」
泣きながらそんなことを訴えられてしまっては、もうたまったものではない。怒涛のような愛しさに突き動かされるがまま、性急にDIOの唇に噛み付いた。後頭部を押さえ込み、無防備な口内に舌を突っ込んだ。この口が俺の性器を咥えていたのだ、と思えばぞくぞくとした興奮が競り上がってくるもので、俺は呼吸をするのも忘れ、ひたすらに熱い口内を貪った。
「は――はふ、はッ、じょ、じょーた、ろッ、んむぅッ、ふぅ……!」
伏せった金の睫毛の先端から、大粒の雫が滴った。DIOはまさに感じ入っているのだ、といった様子でぎゅっと目を瞑り、積極的に口付けに応じながら、ひっきりなしに熱い後孔をうねらせる。そして接合部から白濁の一筋が溢れる度に、逃がすまいと偏執的に俺を締め上げるのだ。
再三やってきた絶頂の気配にカッと全身が熱くなり、喉元で息が詰まる。いよいよ俺はDIOの唇を解放し、白い首筋に鼻先を押し付けた。仄かに香るDIOの甘い体臭が、駄目押しのように興奮に燃料をくべてゆく。DIOの真似をしてそこを甘噛みしてみれば、押し広げられた後孔はより情熱的に食んだ熱を締め付けた。
「じょっ、じょうたろうッ」
「ああ……ああ、どうした、DIO……!」
「はぁ、あっ、も、もっとぉ……もっとしろ、もっとだ、もっと……もっと、して……!」
「してやっている、だろうっ」
「ちがうっ、ひ、ひがう、のだぁ!そっちじゃあ、ないぃぃ!」
「はあ――!?」
途端、俺にしがみ付く力すらも残っていなかったはずのDIOの掌が、がっと俺の後頭部を掴み上げる。無理に上を向かされた首が大層痛く、しかしそんなものが一瞬で気にならなくなる程に、物欲しげに俺を睨むDIOの顔は恐ろしく淫猥であったのだ。赤く染まった、見た目にも滑らかな白磁の肌を、垂れ流しになった涙が、唾液が、惜しげもなく汚している。美しい貌が、手が付けられないほど俗っぽく歪んでいる。ひたすらに――冒涜的だ。

「キスが、したい――承太郎……!!」
「……!!!」

切迫した声までもが甘ったるい、哀れを誘う表情すらも言いようがなくいやらしい。そしてその切実を全身で訴えかけてくるDIOが、どうしようもなく愛しかった。
巨大な感情の爆発に硬直する俺を、DIOは焦燥も露わな双眸で睨みつけた。そして俺の両肩をシーツの上に押さえ付け、口先から俺を丸呑みにせんばかりのキスを仕掛けてきたのだった。暴れる舌に口内を蹂躙される。滅茶苦茶に下半身を揺すられて、品性の欠片もない水音に耳の中を犯される。こんなものはセックスではない、ただの捕食だ。俺がDIOという吸血鬼に食われているだけなのだ。なのにそれが悪くない、全く悪くはなくて、この男の糧となれることを至上の喜びであるとすら感じてしまっている。とにかくもう――気持ちがよくて、たまらない。
「んん、ふ、ぁふ、ふ、ひ……じょうッ、じょう、たろぉ……ぁ、ぁは、お、おいひぃぃ……!!」
「くっ……!DIO……DIO……!!」
ぽってりと熟れた口の端からどちらのものと知らない唾液を垂れ流し、DIOが笑う。あまりに卑猥な、酷い顔だ。酷ければ酷い程に興奮して、愛しさが擽られた。
肩を拘束するDIOの腕を強引に振り払い、上半身を起こしながら白い肩を抱き締める。勢いのままカーペットにDIOの背を押し付けるように倒れ込めば、すかさず長い脚が腰回りに絡んでくる。そうしてDIOは、喘ぐ、喘ぐ。端正な顔をぐずぐずに歪め、大粒の涙を流しながら、嬉しいのだ気持ちが良いのだと喘ぐのだ。
「じょ、じょーたろっ、わ、わたし、死ぬかもしれん!!こ、こんなぁひッ、ひもちい、なんてぇ、し、知らなかった……!知らな、かった、のだぁ、あっ、ああああっぁ、ン、ひぃッ……!!」
「お前は~~ッ!体半分になっても、死にゃあしなかったろうがッ!!」
「だからわたしは、貴様のせぇでッ、あ、も、もうむりぃ、らめえぇぇ!!いくっ、いっひゃうぅ、じょうたろっ、じょぉたろぉぉぉ!!」
「くそ……!!!」
暴れるDIOの足がどんどんと俺の臀部を蹴りつける。そんな衝撃すらもが快感にすり替わり、俺は我も忘れて腰を振った。今や腰に絡む足だけが、鼓膜を殴り続ける嬌声だけが――承太郎、承太郎、と俺を求めるDIOだけが、俺をこの世に繋ぎとめている。そんな気がして、ならなかった。

「ぁッ、で、でてる、じょうたろおの、わ、わたしの、中にぃ、あ、あ、や、」

DIOの中で、熱が弾ける。搾り取るような内壁の脈動に際限のない快感をもたらされ、身も世もなく俺は喘いだ。
腕の中では、DIOが髪を振り乱しながら『おかしくなる』と喚いている。自分の声も、DIOの声もうるさくてならなかった。ので、強引に奴の口を塞いでみれば、DIOは一瞬前が嘘のように大人しくなり、うっとりと目を閉じた。
震える睫毛が愛しかった。





「――つまり、栄養失調だってことなのか?」
「ああ、それはもう重篤な」
白い手を叩き落とせば、ぱしりと乾いた音が鳴る。
「こうして元の形にまで戻れたことからして奇跡なのだ。とはいっても今のわたしはガワだけの張りぼてのようなもので、中身はちっとも2ヶ月前のわたしに追いついちゃいない。もしかすると、平均的な成人男の基準からも大きく劣っている可能性もある。なにせちょっくら血でも貰ってやろうと声を掛けてみた男に、うっかり路地裏に引っ張りこまれてあんなことやこんなことをされてしまったりもしたのだからなぁ、ふふふふふ!ああ腹立たしい、腹立たしい話もあったものだとは思わんか、承太郎め!」
「さらっと何言ってやがるんだお前」
「ま、たまにはそういうのも悪くはなかったものであるのだがー」
「おうこらクソビッチ」
再び攻勢を仕掛けてくる白い指先を、目的地点に到達する前に握り締めた。DIOは軽く手首を左右に振り、指先の拘束を振り払う。
「でだ。今のわたしは大変弱っていて、体を維持するためのエネルギーを大量に欲しているわけなので、血液で賄えないだけの養分を他の媒体から摂取してしまう状態になってしまっているのだな。確かに精液とは、というか精子は人間の元のようなものであるのだし、それらが多大なエネルギーを秘めていたとしてもそうおかしな話ではない」
「やべぇ、理解したくねぇ。なんだそれ。なんだそれ」
「度量の小さい男だな」
ふふん、と鼻を鳴らす裏で、DIOはこっそりと手を伸ばしてくる。応戦するべくこちらも手を伸ばしかければ、その前に白い手はひゅっと空を切り引っ込んでいった。
「……で、結局お前が試したかったことつーのは」
「ジョースターの血は、よくわたしの体に馴染んだろう?だから精液はどうであるのかな、とな。というのもこの3日ばかりの間で色々と試してみたところ、ちまちま血を吸うより中に直接精液を注入された方が腹持ちがいい気がしたのだ。おまけに気持ちが良い。なので承太郎辺りの精液でも搾り取ってやれば、このDIOの完全復活の日も早まるのではないのかと――まあまさか、あんなに酷く酔っ払ってしまう羽目になるとは思っていなかったのだがな、ふふふ。馴染みすぎるというのも考えものだ」
「ああ、いい、もういい、頭が痛ぇ。つーか、」
「うおっ!?」
不穏に蠢く白い手を――先程から人の性器に向かってひっきりなしに伸びてくる白い手を、ぐいと天井に向かって掴み上げた。引きずられるようにDIOの上半身が持ち上がり、おざなりに肩に引っ掛かっていたシャツがはらりとカーペットに投げ出される。
「貴様承太郎、なにをする!」
「そりゃこっちの台詞だ!さっきからなんだお前、叩き落としても叩き落としても人のもんに手ぇ伸ばしてきやがって!猫じゃらしにじゃれつくネコにでもなったつもりか!」
「随分と卑猥な猫じゃらしがあったものだなぁ!」
DIOは拘束を逃れるべくぶんぶんと肩を揺する。なにやらえらく必死そうにはしているものの、こっちからしてみればそんな抵抗はないも同じであるのだった。どうやら『平均的な成人男以下』にまで弱ってしまっているというのは本当であるらしい。
「~~まだ、足りんのだ!」
「はあ?ついさっきまで失神してたくせに何言ってやがるんだ」
「……確かに体の消耗は激しいし、今からセックスをするというのも面倒な話であるのだが、それ以上に腹が減って仕方がない。わたしだって好きでこんなにがっついているわけではないのだぞ」
「……面倒なもんだなぁ、吸血鬼ってのは」
「貴様のせいだ!承太郎がこの体を粉微塵にしたものだから、わたしは四六時中腹を減らす羽目になってしまったのだ!おまけに吸血鬼か淫魔かも分からん生き物にまでなってしまったのだぞ、承太郎め、承太郎め!」
「自業自得だ馬鹿」
「なにをッ、――!?」
掴んだ手首を引き寄せると、抵抗を挟む余地なくDIOの体が俺の胸元に倒れ込んでくる。そして顔を上げ、再び不満を訴えようと開きかけた唇を強引に塞ぎ、舌を突っ込んでやれば、途端にDIOはうっとりと目を細め、ねっとり舌を絡ませに掛かってくるのだった。
数分ばかりそうしたキスに耽った後には、DIOの顔はすっかりゆるゆるととろけてしまっていた。唾液に濡れた唇を拭うことなく、はあはあと乱れた息を吐いている。もう出るものは何もないってのに、それでも下半身に不穏な熱が宿りかねない光景である。手の甲でぐいと口元を拭ってやると、DIOは嫌そうに俺の手首を掴んだ。
「はぁ、くそ……血に精液に、それから唾液に……ああクソ、貴様自体は死ぬほど忌々しい男であるというのに、貴様の体液は他の誰のものよりこの身に馴染む……そして何より、おいしい……」
「……そうかい」
うっとりとした声でそんなことを囁かれてはたまったものではない。本格的におかしな気分になる前に掴んだ手首を解放すると、DIOはずるずると這うように俺の寝台に乗り上げた。
「おい。何してんだお前」
「疲れた。もう寝る」
「……まさかこのまま俺んちに居座るつもりじゃあねぇだろうな?」
「まさか。何故貴様なんぞと生活を共にせねばならんのだ。食事が必要になったらまた来る」
「……行くあてとか、あるのかよ、お前」
「ないこともない」
「どうするんだ、これから。またろくでもないことしでかすつもりだってなら、このまま見逃すわけにゃあいかねぇぞ」
「んむぅー」
俯せになっていたDIOが、気だるげにこちらへと顔を向けた。とろとろと眠りに落ちかかっている顔に邪気はなく、2ヶ月前の邪悪な形相の面影などは微塵も残っちゃいない。
「どうせ貴様は、わたしを見逃すのだろう」
「……ちょっと前にもそんなこと言ってやがったな、お前」
「わたしに同情をしていたのだろう、承太郎?360度硝子張りの部屋に閉じ込められて、実験動物として生かされ続けていたわたしのことを」
「……、」
5日もの間、DIOの元に足を運んでは何をするでもなく眺め続けていた理由について――実際の所、未だ俺の中で決着がついてはいなかった。昏々と眠り続けるDIOを眺めていると、無性にたまらないというか、やるせないような気分になったことは確かである。言われてみれば、あれは同情であるのかもしれなかった。
「ふふふ、お前も立派にジョースターの男であるのだな、承太郎よ」
「知らねーよ、馬鹿」
「わたしは……そうだな、今のわたしには、本当に何もないわけであるからして――スタンドの力を行使しようにも、それなりに腹を満たしてからでなければ満足にいかない状態であるものだし……しばらくは、大人しくしているつもりだ」
「信用できるか」
「ならわたしをあの実験室に送り返すがいい」
ふふふ、と笑う口先が小憎らしかったので、上唇と下唇をまとめて摘まんでやった。DIOはゆっくりとかぶりを振りながら、枕に顔を埋めた。やがてすーすーと聞こえてきた寝息は、馬鹿らしくなる程穏やかなものだった。
「……本当に寝るか、普通」
DIOの言う通り、俺に財団に連絡を取る気はなかった。というのも、DIOに指摘された同情などとは別にして――どうにも今目の前にいるDIOからは、世界に対する悪意というものをちっとも感じ取れやしないからだ。だからと言って、沢山の人間を食い物にしてきた過去の悪事が帳消しになるわけではない。そうとは分かっていても、このただ腹を減らしているだけの吸血鬼を無機質な実験室に送り返すことに、酷い躊躇と拒否感を感じている。
「……はー……」
自分の甘さが嫌になるし、なんだか体一つで誑かされたようで情けない気分にもなっている。もう何も考えたくはなかったので、俺は適当に服を着て、買ったばかりのソファーに身を投げ出した。
そうして狭い仮初の寝台で浅い睡眠をとること6時間弱――鈍い頭痛と共に目を覚ますと、向こう側のベッドからはすっかりDIOの姿が消失してしまっていたのだった。置き時計は午前2時過ぎを差していた。




――ちなみに次にDIOが俺の前に現れたのは、それからたった2日後の真夜中のことでである。

「……なにしてやがるんだ、お前」
「なに、小うるさい承太郎が起きる前に、一発搾り取ってやろうかと」
「なにが直接注入された方が腹持ちがいいだこの野郎!まだ2日しかたってねぇぞ!」
「う、うるさいな!貴様の精液があんなに旨いのがいかんのだッ!あの味がっ、あの高揚感が忘れられなくて、わたしは、わたしはぁ……!!」
「~~、エロい顔してんじゃあねぇよ、この変態!ド変態!」
「ペニス勃起させたままそんなことを言われてもな!」

それからじわじわと数時間、たっぷりと『食事』を堪能した吸血鬼はそのまま1日俺の部屋に居座って、俺のみならず冷蔵庫までをも空にした後に「またくる、それまでにたっぷり溜めておけ」とクソふざけたことを言い残し、どこかへと去っていった。
なんとなく――いずれ本格的にこの部屋が奴の生活拠点になる気がしてならなくて、俺の肝は冷えてゆくばかりである。どうか杞憂であってくれ、どうか、どうか、どうか!







承太郎の色んなところぺろぺろしてはあへーってなっちゃうDIO様とかエロいですよね!


back

since 2013/02/18